「やらなきゃ」ではなく「やりたい」を原動力に。上田 実さんインタビュー

上田 実さん(株式会社ウエダルーフ工業 代表取締役社長)

じっとしていられない性格。施工することが好きで会社経営と同時に、毎日屋根の上に登る。趣味は登山やキャンプ、釣り、スキー、スノーボード、サーフィンなど多岐にわたり、遊ぶことを大切にし、多くのことにチャレンジしている。その傍ら、サッカーコーチとして少年団に関わりながら、しつもんメンタルトレーニングの素晴らしさを広める活動をしている。

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「個」を「集団」にしたい。

藤代 いまはどんな活動やお仕事でしつもんメンタルトレーニングを活かしていますか?

上田 もともとこのしつもんメンタルトレーニングは、サッカーのコーチとして使おうという目的じゃなかったんですね。

藤代 そうだったんですか!目的は何だったんですか?

上田 いまも建築に関する会社を経営しています。このお仕事は職人さんの集団かつプライドも年齢もかなり高く、バラエティに富んだ世界の中にいるので。

藤代 うんうん

上田 例えば、飲み会を開くと必ずケンカになるんです。

藤代 えーー!

上田 もう飲み会やりたくないってぐらい。プロセスは違いがあるものの、結果はいつもおなじ状況になるんですよ(笑)

藤代 あははは(笑)

上田 私はほとんど全くお酒を飲めないので、しらふの状態で。

藤代 それを見なきゃいけない(笑)

上田 もちろん、そばで聞いてはいるんですけど、本当に酔っ払いの戯言というか…。なんだろうなって。本当に飲み会やりたくないなって感じていたんです。

藤代 じゃあ、その職人の皆さんの関係性を良くするにはどうしたらいいか、というのがしつもんメンタルトレーニングのきっかけですか?

上田 そう、そこからが始まりですね。

藤代 へぇ~!

上田 なんだろう。どうにかみんながまとまるようにしたかったんです。「個」だけでなく「チーム」になる方がパワーが出るのは直感的に分かってたのですが、なかなか難しかったんですよね。当時は「この先どんどん仕事が減っていく」という風潮もあったので、この世界で生き残っていくには「個々で生きるより集団で、まとまって立ち向かっていける方が強いんじゃないか」って気がしていたんです。

子どもと初参加したときの衝撃

藤代 なるほどね。そんな背景があったんですね。

上田 はい。それで、2012年か2013年頃に初めて、原宿の竹下通りの会場に行きました。

藤代 うんうん。そうだ、原宿に来てくれて。

上田 その時、初めてフジシーに出会ったんです。職業柄、色んなセミナーは受けていたので、それらとおなじように、講師が資料をプロジェクターに投影しながら一方的に喋るセミナーをイメージして参加したんです。それが全く違っていた。

藤代 どうでした?その時の印象は。

上田 その時は息子と一緒に行ったんですね。

藤代 そうだった!まだまだ若い時だね。

上田 まだ中1になったばかりの息子と一緒にいったのですが、セミナーのスタイルを見た瞬間に「あっ!しまった」と思ったんですよ。

藤代 あははは(笑)失敗したと?

上田 大人の中に中学一年生ひとり。「これはマズイな…」そんなイメージを抱いていたんですけど。

藤代 どうでした?

上田 衝撃でしたね。

藤代 衝撃?

上田 何だろう…いままで受講したセミナーとかとは全く違っていて。

藤代 うん。

上田 「これだ!」と思ったのが本当に正直なところですね。「すげー!!」みたいな感じでした(笑)

藤代 あははは(笑)そうだったんだ。お子さんはどんな感想を持っていたの?

上田 帰っている途中でいきなり「パパ、飲み会行かないの?」って言われたんですよ。

藤代 うんうん。

上田 「いや、懇親会は行かないよ。いい親が、中学生連れまわして、夜遅くまでフラフラしていられないから。本当は出たいけど、今日は帰るよ。お前がいる時はそういうのは出れないから」と言ったんです

藤代 うんうん。そしたら?

上田 息子が「俺は行きたい」って言うんですよ(笑)

藤代 あははは。逆にね(笑)

上田 そんなやり取りが息子とありながら

藤代 おもしろいね(笑)

上田 10回以上?受けてますよね。

藤代 一緒に何回も何回も来てくれてますよね。

上田 誘うと来てくれるんですよ。「行く行く」って、そんな感じなんですよね。彼が言うには「自分を見直すのにすごくいい」って言うんです。

藤代 うんうん。

上田 なんだろう。「自分を見つめる時間」というように受け取ってくれているようなんです。

藤代 なるほどなぁ。世間一般的には中学生って「難しい時期」と言われるわけじゃない?親となるべく距離を置きたい時期という子どもが多いけど、誘ったら来てくれるんだね?

上田 来てくれますね、いまだに。

藤代 へぇ~すごいなぁ。

上田 この前もなおちゃん(伊藤直子さん)のアクティビティーインストラクター養成講座に参加したんです。

藤代 そうだそうだ!一緒に参加してくれたんでしょ?

上田 そうなんです。一緒に参加して、あいつもインストラクターの認定書をいただいたんですよ。

藤代 すごい!聞いた聞いた!

上田 聞きました?

藤代 うんうん。

上田 いいのかな?と思ったんですけど。

藤代 いいよねー!

上田 衝撃でしたね。なんていうんだろう。大人の我々が見えないところが見えてるんですよね。視点が全然ちがう。見てる世界が違うんだなぁとすごい感じまして。

藤代 へぇ~!!!

上田 良かった、これはしつもんメンタルトレーニング素晴らしいなって改めて思いましたよ。

 

子どもの変化を見た親が「私たちもやりたい」と声を上げてくれた。

藤代 さっきの話に戻ると、関わってくださる職人の皆さんへの実践はどうでした?何か変化はありました?

上田 実は、会社では1回もやってないんです。

藤代 あははははは(笑)会社の目的で学んだけど、会社ではやってないんですね。

上田 そうなんです。会社のために学んだんですけど、自分の息子の反応を見てしまったら子どもの素直さにはまってしまって。当時、少年団のサッカーコーチをやってたのもあって。

藤代 子どもの素直さに取り憑かれちゃったの?(笑)

上田 そう、取り憑かれちゃったんです。それでこう、まずは子どもたちにやってみようと思ったんですよ。

藤代 へぇー!

上田 そこから慣れていったら会社でも導入しようかという考えで。

藤代 少年サッカーの方はどうですか?何かやってみて何か変化ありました?

上田 以前に、全日本大会の朝、試合会場に行く前にアクティビティのコンテンツを実施したんです。あれは朝6時半位だったかな。

藤代 はやっ!(笑)

上田 そうなんです(笑)みんなでしつもんメンタルトレーニングをしたあとに、試合会場に行ったら、その日は全勝したんですよ。

藤代 へー!!

上田 そこで取り組んだことを試合にも活かしてくれたことが、すごく嬉しかったかな。全日本大会だったので保護者の方もかなり来ていたんです。いつもの表情と違う子ども達を見て「上田コーチ何やったの?」「何て言ったの?」といった反応がたくさんありました。「それは内緒です。講座開いたときに教えてあげます」と、チーム内で講座が開催できるような方向に持っていっています(笑)

藤代 うんうん。

上田 そのあとに実際に保護者のみなさんにも受講していただいたんです。

藤代 へー!皆さんの感想はどんな感じでした?

上田 保護者のみなさんも「自分自身を見つめ直す時間ができた」とか「子どものことをもっとサポートしたいとおもった」といった感想が多かったですね。

藤代 初めて来てくれたとき「すごい」と思ってくれたわけじゃないですか。でも、しつもんメンタルトレーニングは誰でもおなじように講師ができる。それはな感じてもらえました?

上田 最初はほとんどモノマネですね。型どおりやるというか。そのまんまフジシーが喋ってるのを同じように喋っていました。

藤代 うんうん

上田 けどやっていくうちに段々、自分の言葉に変わっていくことを感じました。オリジナルのエピソードを間に交えたり。経験を積んでいくことで、余裕も少し出てきたのかもしれませんし、上手く伝わるようになったかな。やっぱり、自分の言葉で伝えるのが1番だと感じています。

藤代 確かに、確かに。参加者のみなさんの感想は全く一緒ですよ。僕がやるときと、ほとんど同じ感想です。

上田 あ~そうなんですか(笑)

 

アウトドア体験で子どもに「生きる力」を。

 

藤代 皆でキャンプしたじゃないですか?あの時、まったく知らない人たちと関わる息子を見て、どんなこと感じていました?

上田 キャンプに行った時は、自分の息子だから上手くやるんだろうなと思ってたんですよ(笑)

藤代 ははは(笑)

上田 キャンプは彼の得意分野なので。もう小さい頃からキャンプばかりしているんです。サッカーを始める前は6泊とか7泊をテント生活していたんです。

藤代 うんうん。

上田 家族で行くときは、テントを自分で張って、ご飯も自分で研いで、自分で炊いて。

藤代 うん

上田 一人っ子だったんで「生きる術」を教えなきゃいけないかな、と彼が生まれた瞬間から思っていたんです。

藤代 へぇー!なるほどね。

上田 私は双子として生まれて、姉もいるので3人兄弟なんで、何かあれば兄弟がが助けてくれると幼い頃から感じていました。甘えもありましたね。子どもは一人っ子だというこもあって、結構厳しくは育てたと思うんですよね。

藤代 一般的に一人っ子だと可愛がって、あれこれしてあげたくなるものじゃないですか?そんなことないですか?

上田 「あれこれしちゃうと子どものためにならない」という強い思いはあったんです。

藤代 それは家族の考え方として、そうしようと。

上田 そうですね、本当にもう。何か親にあっても、1人で困ることなく生きれるようになってほしいなと。キャンプもそうですけど、ほとんどアウトドアは全部体験しましたね一緒に。本当に遊ぶことばっかりで。その中から何か培ってもらいたいなという気持ちがあります。

藤代 でもすごい逞しかったし、小さい子たちから慕われてたよね。

上田 そういうのはありましたね。あのキャンプは本人にとってもすごく良かったのかな(笑)

 

「やらなきゃ」ではなく「やりたい」を原動力に。

 

藤代 今後はどんな活動をしていきたいですか?

上田 今後は中学の部活に関わりたいなと少し感じています。でも、フジシーも地道に活動してきていまにつながっているのかな、とすごく感じるので、俺も地道に、焦らずいきます(笑)

藤代 焦らずに(笑)

上田 あとは、しつもんメンタルトレーニングの10ヶ条の「楽しむ」を第一に活動していきたいですね。

藤代 楽しむ。

上田 私はそこなんで。

藤代 ふふふふ(笑)

上田 とにかく自分が楽しまないとダメなんです。「やらなきゃっ」てなると絶対うまくいかないと思うんですよ。

藤代 うん、確かに、確かに。心が動かないとダメだと。

上田 そうっすね!

藤代 へぇ~、いいないいな、なるほどね。

上田 まぁでも、それで失敗もいっぱいあるんですけどね、深く考えずに行動をし過ぎて(笑)

藤代 もちろん、もちろん(笑)失敗しない人なんていないですからね

上田 えぇ(笑)しつもんメンタルトレーニングの3つのルールにはとても救われています。「どんな答えも正解」「わからないも正解」「他の人の答えを受け止める」安心安全な場所が子どもたちにとって大事だなと感じています。

藤代 そうですね。個人的にはキャンプを定期的にやりたいっす(笑)

上田 常に頭には入っていますよ。息子にも言われてるんです(笑)

藤代 この前、ぼく神津島に行ってきたんですよ。行ったことあります?

上田 ないっす。

藤代 最高でしたね(笑)スポーツのジャンル、年齢の異なる子どもたちと大人が集まって、何かできるっていいなーと思ったんです。バーベキューしたりキャンプファイヤーしたり、一緒に何か作ったり。特に都会の子たちは、そういうのに慣れてない子もいるかもしれない。でも慣れてないだけで興味がないわけじゃないから、やり始めたらみんな楽しそうにやりはじめる。そういう機会をつくりたいなぁ。さっきみのさんが言っていた「生きる力を」じゃないけれど。

上田 やりましょう!

藤代 ありがとうございます!

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤代 圭一

一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。 しつもんメンタルトレーニング主宰。   「教える」のではなく「問いかける」ことでやる気を引き出し、 考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。 全国優勝チームなど様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。   著書に 「スポーツメンタルコーチに学ぶ『子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)" 「サッカー大好きな子どもが勉強も好きになる本」(G.B.)「惜しい子育て」(G.B.)「『しつもん』で夢中をつくる! 子どもの人生を変える好奇心の育て方(旬報社)」がある。