子どもの「心の声」は対話で見えてくる 若松礼恵さんインタビュー

若松礼恵さん(しつもんメンタルトレーニングインストラクター)

普段は大手コールセンターで働き、休日には幅広い年齢の方々を対象にさまざまなレッスン・講座を展開している。しつもんメンタルトレーニングの他、スポーツリズムトレーニングディフューザーであり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてスポーツトレーナーや救命資格取得に挑戦中!!1979年生まれ。北海道札幌市在住。趣味はマラソン・野球・ホッケー。

 

しつもんメンタルトレーニングで視野が広がり、観察の姿勢が身についた

 

藤代 しつもんメンタルトレーニングに興味を持ったきっかけは何だったんですか?

若松 きっかけは、2年位前にしつもんメンタルトレーニングトレーナーのナオさん(伊藤直子さん)からメッセージが来たことです。facebookの友達申請を兼ねて、「しつもんメンタルトレーニングをやっているのですが、興味ありますか?」という内容のメッセージが来たんです。全く知らない人からでした(笑)

藤代 ハハハ。それだと怪しがらない?

若松 すごい怪しいなと思って、初めは無視していたいたんですよ。「スポーツリズムトレーニング」をやっているので後々そのインストラクターさんの繋がりで、どうやら北海道でメチャメチャ広めている人がいると。当時、北海道で「スポーツリズムトレーニング」をできる人は私しかいなかったので、今度は私から友達申請をしたんです。

藤代 最初、怪しいと思っていたわけじゃない?

若松 何かの宗教の勧誘と思ったわけなんですよ(笑)。

藤代 (笑)どうしてそこから関わってみようと思ったわけ?

若松 スポーツリズムトレーニングや他にも色々なスポーツインストラクターをやっているのですが、やっぱり子どもと接することにすごい限界を感じていて…。

藤代 ほー。

若松 引き出しがないかな…と。子どもと接するための知識やコミュニケーションをとれる力が足りないかな、できていないなと思っていたときに、たまたま藤代さんのfacebookを見たんです。あ、これいいな、と。しつもんメンタルトレーニングはワークブックとアクティビティが2つあるんだなと知り、スポーツ系だから初めはアクティビティだけを受けようと思っていたんです。

でも、私は障がいを持つ子どもにも教えているので、ワークブックも必要だなと。それでふと、「しつもんメンタルトレーニング」…聞いたことあるなぁ…聞き覚えあるなぁ…と思ってナオさんのメッセンジャーを見たら同じ「しつもんメンタルトレーニング」って書いてある!これはナオさんに聞いてみようと思って。

ナオさんに「これどうなんですか?藤代圭一さんの……」と連絡したら、「そう!それなんだよね」という話になって(笑)「じゃあ今度来てー!」となったんです。

藤代 おもしろい(笑)

若松 北海道在住なのですが、いろいろ遠方には行っているんですけど、静岡まで行く機会がないですよね。なのでまず、仙台のあゆみさんのところに(*)。私はホッケーをやっているので。

藤代 あ、そうだったんだ。

若松 そうなんです。

藤代 オリンピアンに会えましたね!

*鈴木あゆみさん:しつもんメンタルトレーニングトレーナー(女子アイスホッケー長野五輪日本代表)

若松 まずワークブックを受けてみたら分かるよ、という話になって。昨年の11月かな。

藤代 それで受けてくれたんだ。

若松 そうです。あゆみさんとナオさんが繫いでくれて。

藤代 おもしろい出会い、きっかけから始まったんだね!

若松 そうなんですよ。

藤代 そこから学んでみて、いいなぁと思ったところはどんなところがありましたか?

若松 学んでみていいなぁと思ったところは…

藤代 最初は怪しいと思ったでしょ?(笑)

若松 怪しかったです(笑)

藤代 何が違う?

若松 視野が広まりましたね。人に対する見方というんですか。私は変な話まっすぐしか見ないタイプなんですよ。自分しか見てないタイプで、周りを見ないタイプ(笑)。内向的なタイプで、あまりしゃべらないし。

藤代 うん、うん(笑)

若松 自分さえよければいいや、みたいなタイプなんですね。やってみて、ああ…周りの人もこういうふうに思っているんだなあとか、こういうふうな人もいるんだな、とか。人間観察はできるようになったかな。

藤代 なるほどね。今までは「自分はこう思ってる」というものがあって、それと違う人がいるわけじゃない?それはどうなっちゃってたの?

若松 もう近づかないようにしていました。

藤代 あー、なるほどね。

若松 あまりしゃべらない、近づかない、腫れ物に触らないような感じです。

藤代 (笑) でも、インストラクターや指導していたら、必ずそういう人はいるでしょ?

若松 いますね。

藤代 そういう人からもちょっと離れるんだ?

若松 愛想笑いで、「あ〜〜」「こんにちは〜〜」(笑)あまり深く話さないという感じです。

藤代 なるほどね、へぇ(笑)それがちょっとづつ違う考え方も受け止めるようになってきたんだ。

若松 そうですね。話せるようになってきたんだと思います。

 

「秘めた思いを外に出せて嬉しい」と泣いたお母さん

 

藤代 なるほどね。学んだ後、実践してみて何か印象に残っていることはありますか?

若松 実践してみて、そうですね…これまで喜ばれることがなかなかなかったのですが、喜んでもらえる、感謝されることが増えました。「やってくれてありがとう」「楽しかったよ」と言ってもらえることがなかなかなかったんです。

藤代 今までに?

若松 そうなんです。寂しい女なんですけど(笑)

藤代 そんなことはない。見返りを求めずに届けてたんでしょ?それが返ってくるようになったということ?

若松 そうなんですよ。それで終わった後に何かプレゼントもらったりとか。お手紙もらったりとかして

藤代 皆が思ってた以上に喜んでくれたということ?

若松 そうなんです。参加費もお支払い頂くんですけども、その他にもお手紙頂いたりとかプレゼント頂いたりとかするんですよ。

藤代 相当喜んでくれたんだね、じゃあね。

若松 そうなんですよね。

藤代 その人たちはどんな感想を言ってくれたとか覚えてる?

若松 すごく覚えているのは、直接その場で終わる前で泣いてしまった方のこと。保護者であるお母さんなんですけど、泣いてしまって。実は感想も書けないくらいでした。

藤代 うん、うん。

若松 とりあえず、やってくれてありがとう、みたいな感じのことだけさらっと言ってくれてましたね。だからプレゼントくれたのかな。

藤代 わからないけど、推測でもいいけど、何か感極まって涙が出る程喜んでくれたんだと思う?

若松 「自分の中に秘めているものを外に出す機会があって嬉しい」と言ってましたね。

藤代 ああ、なるほど。思ってるけど言えなかったことを言って、受け止めてもらえるということが嬉しかったのかな?

若松 だと思います、たぶん。

藤代 なるほどね。それは確かにそうだよね。普段だと皆忙しいし、話してもついつい時間も限られているし。ストレスもあったりするとなかなか最後まで聞いてもらえなかったり。否定しちゃったり遮っちゃったりするじゃない?

若松 うん、うん。

藤代 それをまずは、「そうだね」と受け止めて貰えるのはもしかしたらなかなか無いかもね。

若松 うん、そうかも。

藤代 なるほどな。他にも印象に残っていることある?

若松 印象に残っていること…そうですね…小学校の2年生か3年生くらいの男の子と女の子が混じってカウントダウンゲームをやったんですね。カウントダウンゲームをやりたくてやりたくて。始め、1回戦、2回戦、3回戦とやるんですけども、2回戦終わった後に、「まだやりたい!記録を伸ばしたい!」と。制限時間を伸ばせ、とか。

藤代 ハハハ。ルールを変えろ、と。

若松 5回戦までやってほしいとか、ルールを変えてくるお子様がいらっしゃいまして。

藤代 (笑)

若松 でも、楽しかったようで。この(制限)時間を伸ばしたら(記録は)更新できるけど差が分からなくなるからそのままでやりましょうとやったんですけど。ルールを変えてくれ!と言う子がいたんです。楽しすぎてもっとやりたい、と

藤代 うん、うん。

若松 ルールを改定しよう!と言う子が何名か出てきたり。

藤代 その印象に残っているのは、それほど子ども達が夢中になって取り組む姿が微笑ましいというか、嬉しかったということ?

若松 嬉しかったですね。「これ、明日絶対学校でやる!」とか。

藤代 ハハハ。

若松 紙もってっちゃって(笑)。「多めにコピーの紙をくれませんか?明日学校でやるんで」と言われたのですが、次の日、学校で真似してやったそうです。

藤代 へぇすごいすごい!そうか、もともと子ども達と関わって、子ども達がもっと自分たちで考えたり楽しんでやってくれたりするような関わり方ができないかな?と思っていたところだったから、尚更嬉しかったという感じだったのかな?

若松 そうですね。周りに大人もいたんですけど、大人も(聞き取れない)だったし(聞き取れない)。

藤代 いいね、いいね。そういう時が一番楽しいと感じる?

若松 感じますね、やっぱり。お互い先生も子どもも、そういう境目も何も関係なく

藤代 なるほどね、なるほどね。

若松 始めは私を「先生」と呼んでいたんですけど、途中から慣れてきたら「ユッキー」「ユッキー」「ユッキー」「ユッキーこれやるの?何やるの?」と(笑)。フレンドリーな感じの会話になったので。あ〜、親しみがあっていいな…と思って

藤代 同じ目線になれたという感じだったのかな?

若松 そうですね、同じ目線になれたと感じました。

 

障がいのある子どもと向き合う

 

藤代 いいですね、それは。ハンディを抱えている子どもたちにもしているの?

若松 しています。身体障害の子どももいますし、発達障がいのお子様にもやらせて頂いたり。

藤代 どうですか?皆楽しんでくれてる?

若松 そうですね、楽しんでくれていますね。ただやっぱり、集中力がない子やどうしても理解ができない子がいたりします。そこは休憩を挟みながらやったり、書くのではなくカード形式で選んでもらったりしながら。

藤代 あ〜、なるほど。

若松 そういうふうに変えてやったりとかしてますね。

藤代 どう?皆の感想とかで覚えていることある?

若松 感想…そうですね。失礼な言い方なんですけど、障がいがある子は知能指数が低いんですよね。だけどやっぱり理解はできていて、大人並みの答えができているというか、きちんと答えられている。「嫌なことは何ですか?」と質問した時に、その子自身は障がいと言われるのが嫌だ、とか、差別されるのは嫌だ、と答えが返ってくるのかな?と私は想像したんですね。けれどその子は、「学校で女子同士で集まって集団トイレに行くのが私は嫌だ」とか。(笑)

藤代 おもしろいね。

若松 5歳の女の子なんですけど、恋愛の話…「〇〇君が好き」とか「〇〇ちゃんが嫌い」とか人前でするのは、とてもじゃないけど恥ずかしいと思わないのかな、と。

藤代 5歳の子が(笑)おもしろいね。

若松 というふうな答えをしてくるんですよ。大人顔負けの答えも来るので。

藤代 本当だよね。

若松 びっくりしますね。偏見じゃないですけど、内側の心というのは話してみないとわからないというのがありました

藤代 本当だね。僕の高校の時の友人が女性から男性に性転換したトランスジェンダーの子なんだけど、その子を含め今LGBTQの方と一緒に作っている「ボーダーレスカード」というのがまさにそう。どんなことに恥ずかしいとか、どんなことに楽しいとか、本人に聞いてみないと分からないと思ってるし、ほんと聞いてみないと分からないじゃない、それって。ついつい先入観とか見た目でジャッジしてしまって、「きっとこうだろう」「おそらくこう考えてるだろう」と思っちゃうんだけど、若松さんの言う通りだと思う。

そんなことは全然考えていないということは話してみてようやく分かる。社会にそういった機会がもっとあるといいよね。僕も若松さんに聞いてそうなんだと思ったことあったしね。

 

「アクティビティ講座」の開催と口ビルディングを広めたい

 

藤代 今後はどんなことをしていきたいですか?

若松 今後はですね、アクティビティの講座を実はまだ1回位しかやってなくて。アクティビティをもうそろそろ主催でやりたいなと思っているんですよ。ワークブックだと3.4人集まればできるんですけど、アクティビティはどうしても人数集まらないとできないので。

藤代 そうですね、確かに、確かに。

若松 そこがちょっと課題なので、それを今年中になんとかやりたいなと思ってます。

藤代 いいですね。他には?しつもんメンタル以外の事でも個人的な事でもいいよ。

若松 口(くち)ビルディング選手権というのがあって。ボディビルディングわかりますか?あれの口ビルバージョン。

藤代 おもしろいなー。

若松 顔の筋肉をトレーニングするということで、大体、高齢者向けなんです。今、のどを詰まらせたりする嚥下障害をもつ高齢者の方が60%いらっしゃるんですよ、65歳以上で。それを予防するトレーニングを身につけて、それをパーソナルトレーナーという形で普及させる。それで今、「口ビルディビル選手権大会」を開いて競ってもらって、優勝した人には何か差し上げようかなという構想を練っているんです。

藤代 へぇ、おもしろいね。いいね、ぜひ何か一緒にできるところから実践していけたらおもしろいし、北海道を盛り上げて頂けたら。今日はありがとうございました。

若松 そうですね、嬉しいと思います。ありがとうございました。

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤代 圭一

一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。 しつもんメンタルトレーニング主宰。   「教える」のではなく「問いかける」ことでやる気を引き出し、 考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。 全国優勝チームなど様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。   著書に 「スポーツメンタルコーチに学ぶ『子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)" 「サッカー大好きな子どもが勉強も好きになる本」(G.B.)「惜しい子育て」(G.B.)「『しつもん』で夢中をつくる! 子どもの人生を変える好奇心の育て方(旬報社)」がある。