コントロールを手放した先に「喜び」がある。 高島 弘幸さんインタビュー

 

高島 弘幸さん(ジュニアサッカーコーチ)
1974年 静岡県清水市生まれ、東京都町田市在住。2012年に子どものサッカークラブ入部と共に指導者となる。上の子年代の卒部後にしつもんメンタルトレーニングに出会い、下の子たちの指導へ取り入れつつ、より子どもたちが輝ける環境づくりを目指してクラブ内の指導者・保護者向けに講座を開催、普及に取り組む。 ▶所属クラブHPはこちら 

 

鬼コーチ時代の失敗体験をいまに活かしたい

藤代 普段はジュニア年代のサッカーコーチをしていると思うんですけど、しつもんメンタルトレーニングとの出会いは何でしたか?

高島 上の子が小学生のころ、お父さんコーチとして指導に携わっていたのですが、自分がサッカー経験者ということもあって、大声で指示的に関わる「鬼コーチ」だったんです。あるとき、チームをやめるという選手が最後にあいさつに来てくれて、事前にご家庭の事情でやめると聞いていたのですが、選手本人から「高島コーチが怖かったです」と伝えられて、大きくショックを受けたこともありました。でも、上の子の年代を指導していた期間を通じて、仲間のコーチとともにこの子たちはどうしたら強くなるだろう?と議論しながら、練習メニューはもとより、いろんな活動をしていたのですが、目指していた結果というのは得られなくて、卒部させたあと「こちらの意図が伝わらなかったなー」という思いが残りました。

藤代 いま振り返ってみると、子どもを「恐れ」で支配するような関わり方になってしまっていたということ?

高島 もちろんそんなつもりはなかったんです。当時の選手達は「嘘だろ!」と言うかもしれませんが(笑)

藤代 もちろん、もちろん(笑)

高島 こちらはそんなつもりはなかったんですよね。

藤代 違和感を感じたまま、しつもんメンタルトレーニングを学んだり、実践してみて、自分の中で変化はありましたか?

高島 やっぱり、コーチはヒントを出す立場なんだなと改めて感じました。上の子たちを指導している間に、自分自身もずっと考えていたことではあったのですけれど、改めてそう感じたんです。「しつもんメンタルトレーニングの10ヶ条」の中に掲げられている「コントロールしない」と「信じる」。この重要性を改めて感じました。「期待を手放して、信じる」ここが足りていなかったことに気がついたんです。

藤代 なるほど、なるほど。

高島 これって、僕たち大人が子どもと関わる時の「10ヶ条」だなと解釈したんです。そこで、この気持ちをまずは僕と同じように「伝わんないな」と悩んでいるコーチやチームの保護者のみなさんに伝えたいと思いました。グラウンドでの練習だけではだめだと思っていましたし、チームに関わる人みんなで「10ヶ条」を大切にしたいなと。

藤代 なるほど、なるほど。保護者の方に伝えたり、そのマインドや考え方を持って子どもと接することで変化は出てきました?

高島 少しずつではありますが、変化を感じています。「しつもんメンタルトレーニングの10ヶ条」を「大人が子どもに関わる時の10ヶ条」とアレンジさせてもらって、コーチや保護者のみなさんに伝えました、何回も何回も。3年経って、ようやく先日は選手にしつもんメンタルトレーニングを実施してみた、というくらい大人にばかりやってきたんです(笑)

藤代 3年も!すごい!保護者の皆さんも最初からは賛同してくれないですよね?

高島 そうですね。ですけど、僕自身のコーチとしての失敗談にとても共感していただいたようで(笑)

藤代 (笑)

高島 卒業した子どもたちに「鬼コーチ」として接したことで、子ども達の力を引き出せなかった。うまく伝わらなかったなぁと。その反省をふまえ、しつもんメンタルトレーニングを学んできたので「一緒にやってみましょう!」とクラブへの導入を提案してみたんです。また、鬼コーチ時代のエピソードや失敗体験も赤裸々に伝えることを意識しました。すると、みんな同じ地域の親ですし、ワークに取り組んでいくことで、「私たち大人が変わらないといけないのかも」と僕と同じような印象を持ってくれたんです。それに加えて「10ヶ条を大事にしたい」という話をすることで、とっても共感してもらえました。

 

「命令」をやめて「失敗」で伝えると伝播する

 

藤代 へえー、すごい!保護者の方に対して、一生懸命取り組んできたんですね!お話を聞いていて、すごい良いなーと思ったことが、保護者のみなさんを「否定しない」こと。保護者の皆さんに「もっとこうしなさい!」「こうするべきだ!」「あなたの関わりは間違っている」と否定するのではなく、過去の失敗談を通じて、共感してもらえるように地道に伝えていった。「過去の関わり方に心残りがあるから、今後は違うやり方でやっていきたいんです」という伝え方は、とても共感してもらえるのではないかと感じました。

高島 そうですね。僕自身、どうしたら良かったのかなと困っていた中でしつもんメンタルトレーニングと出会いました。これからの時代は、子どもたちが考え、行動できる環境をつくる必要があることを僕たち大人は知っておく必要があるのかもしれない、と思ったんです。そして、自分自身がしつもんメンタルトレーニングに出会って、変われた実感があったので「みなさんもどうですか?」とおすすめしているという感じですね。

藤代 実際に保護者の皆さんは高島さんの話を聞いたり、講座を受けてどんな感想を持っていますか?

高島 「期待はなかなか捨てられないですねー!」とか「こういう時は応援ですよね、高島コーチ!」(笑)といった、変わりたいけれど、なかなか難しいぞー!という会話がグラウンドで起きています。

藤代 (笑)

高島 しつもんメンタルトレーニングの世界観の言葉での会話が増えてきていますね。

藤代 チームの中で、共通言語ができてきた感じですか?

高島 そうですね。

藤代 まずは保護者の皆さんと「チームとして大切にしたい価値観」を少しずつすり合わせていってるんですね。すごいなぁ。そうすることで、まわりまわって子どもたちに変化が起きたと感じることはありますか?

高島 考え方は千差万別ですもんね。「高島コーチのしつもんメンタルの講座を受けたけどピンと来なかったよ」という保護者の方も中にはいらっしゃると思います。全体的に一気に変化があったかと言われれば、変化がゆっくりですが出てきているのかなと思います。いまは、実験期間という気持ちも強いですね。悪い言い方ですけど実験してみようと思って(笑)

藤代 (笑)

高島 上の子どもたちの時は完璧な鬼コーチだったので、下の子どもたちの時は、しつもんメンタルトレーニングどっぷりでもう質問しかしないぐらいにしようかと(笑)

藤代 どんな違いがあるか楽しみですね(笑)

 

 

子どもと「提案・実践・振り返り」を繰りかえす

 

高島 指導の技術的な引き出しはほとんど一緒なんです。というと指導者として進歩が見られないので恥ずかしいですが、技術的な引き出しはそのままに接し方だけを変えたらどうなるか、これはもう壮大な実験だなと(笑)

藤代 (笑)

高島 だから、ずーっと質問しています(笑)「また質問でしょ?」と子どもには言われるんです(笑)「なんでそう思うの?」「いつも質問するから。」「そうだね。というやりとりを続けて…(笑)

藤代 くり返してる(笑)

高島 そう、くり返してやってます(笑)

藤代 実験というフレーズが出たので、実感値としては変化は少ないかもしれませんが、なんとなく感覚として印象に残っていることはありますか?

高島 上の子どもが小学3年生の時から指導に携わったので、2年生以下の子どもたちを教えたことがなかったんです。子どもたちが卒業して、僕が低学年に担当が変わる時に、先輩コーチたちから「1、2年生はほとんど会話が通じないよ、言うことなんか聞かないし覚悟したほうがいいよ」と言われたんですよ。でも、全然そんなことなくて、質問していると彼らから寄ってくるんですよね。

藤代 おーすごい(笑)

高島 子どもたちに「じゃあこれやってみる?(提案)」「まずこれやってみよう(実践)」「どうだった?(振り返り)」このくり返しなんです。細かい説明をする前に、まずやってみる。そして「どうだった?」と聞いてみる。子どもたちから「こうだった」と返事が来たら、「そうかもね、次はこんな練習にチャレンジしてみない?」と、そのくり返しです。すると「コーチ!コーチ!ぼく、こんなこともできるよ!」と子どもたちの姿勢がどんどん変化してきたんです。すると、「僕だってできるよ!」「僕もできるよ!」とやる気が伝染していく。先輩コーチたちからは「1、2年生は練習に飽きて遊び始めるよ」「砂遊びを始めるよ」「遊具があればそっちに行くよ」という話をたくさん聞いていました。もちろん、子どもですからずっと集中しつづけることは難しいものです。僕的には集中が切れて砂遊びする子が出たら、「あ!砂遊び!どうしたの?」と、彼らがしていることを咎める感じではなく、興味を向けるようにしていますそして、練習に集中を戻してもらえるように関わっています。すると、だんだん練習から外れていなくなる子は少なくなってくるんですよね。また、親御さんから「サッカーが楽しい」「練習に行くのが楽しい」と間接的に子どもたちの声を聞くこともあります。

藤代 すごい!

高島 すごいのは藤代さんだと思います(笑)

藤代 いやいや、高島さんが実際に関わってらっしゃるわけですから(笑)ご自身の感覚として、指導している時の楽しさや幸福感はどんなところに感じますか?

高島 元々鬼コーチなので、まだまだ我慢しているところがありますね。人間なので心底楽しめている時とそうではない時とあります。

藤代 もちろん。

 

コントロールを手放した先に「喜び」がある

 

高島 まだまだ「楽しいコーチ」を演じているところがあって非常にエネルギーを使っています(笑)でも、やっぱり子どもたちから良い反応があると嬉しいですし、自分自身の幸福感は確実にあがっています。この間、町田市の金井グラウンドに試合で行ったんですよ。

藤代 おー!ぼくの小学生時代のホームグラウンドです。

高島 ほかの大会なんかでもそうなんですが、別のチームのコーチたちにはたとえば「違う!5メール下がれ!」とか「そっちじゃない!反対へ行けっ!」と伝えている方もいらっしゃるんですね。もちろんチームで目指している方向性が違うので否定はしません。僕は同じ声量で「次どうなるかなー?」「次どうなるかなー?」と試合中も質問しているといった感じです(笑)

藤代 (笑)

高島 あのコーチちょっと変わってるぞ?!と市内で言われてないか心配です(笑)そういう意味では試合自体も、僕が自分でなんとかしようと思わなくなりました。彼らを信じて、楽しんでいます。ハラハラしますけどね。自分の息子に対しては時々叫んでしまうこともありますので、そこは反省ですね。けれど、いまの高校一年生の子どもたちを教えていた時とはまったく違うコーチにはなってきている実感はあります。試合をやっていると楽しいですね。

藤代 どんなところが楽しいですか?

高島 僕が自分で何とかしようとしなくても、子どもたちは自分で考えて行動しているんですよね。それを見て、頑張れ!と(笑)

藤代 なるほどなぁ。自分のコントロールを手放した時に、子どもたちが自分で行動しているのを見て、楽しいと感じるということですか?

高島 そうですね。「何も教えてないのに、子どもたちはチャレンジしてるよね!」と仲間のコーチとベンチで話してるときも楽しいですね。池上正さんの「教えない指導」も参考にしています。

藤代 「親は子どもから離れなさい」ですね。

高島 そうなんです。全部実験だ!と思ってやっていますね。

藤代 なるほどなぁ。話を聞いていて、感じることがあります。僕、飽き性なんですよ。色々なことに興味があるので、ひとつのことをずっと続けられないタイプなんです。でも、「なぜ、しつもんメンタルトレーニングは続けられているのだろう?」と自分に問いかけてみると、自分にはコントロールできないことが沢山あって変化がある。この変化が楽しいんだと感じているんです。

高島 たしかに、自分の思い通りにいかないのが当たり前になっていますね。

藤代 そうです。それが楽しいと感じられて「そうきたか!」と(笑)

高島 あります!あります!(笑)

藤代 ありますよね?自分が思っていた以上に素晴らしい表現や素晴らしい結果になったり、考えつかなかったすごいことや行動が生まれたり。子どもって本当にすごいな!楽しいな!と。僕たち大人が、思い通りにやり、思い通りの成長を遂げ、思い通りの結果が出ることも「楽しい1つの形」だとも思いますが、たぶんそれだと僕は飽きているんだと思います。

高島 ひとつのパターンができ、そのパターンにはまらなかったら子どもを否定してしまう。コイツらダメなんだなとなってしまう。

藤代 そうです、そうですね。

高島 きっとそうなるでしょうね。

藤代 今後はどうしていきたいですか?

高島 子どもたちも親御さんたちも卒業と同時に一緒に入れ替わってしまいます。継続的にグラウンドに立ち、そして実験中なので僕の考えや感じたこと、そしてエピソードも変わっていくと思いますが、常に新しい状態で保護者の方には伝えていきたいなと思っています。子どもたちには講座ではなくサッカーのグラウンドの中で伝えていければと思っています。あ、でも先日は練習のグラウンドが使えない日があったんです。そこで、「じゃあ全学年で実験をしよう!」と、全学年で集まって、縦割りで(学年を)混ぜてやってみました。

藤代 1年生から6年生までだと、一緒に取り組むことは難しい側面もありますよね。

高島 そうなんです。でも、混ぜてやったことが楽しかったと感想に書いてくれた子もいました。

藤代 おー!いいですね。

高島 「普段は話せない上級生と一緒にできて楽しかった!」と。僕の狙いとは違うところに良い感想があると「おー!そうきたか!」と感じます(笑)

藤代 (笑)

高島 タイムマネジメントをあまり意識せず、子どもたちのペースに合わせてやろうと思っていたので、取り組めなかったワークがありました。ですので、第2弾として次回にやってもいいかなと思っていますし、「その時は同席させてください!」「見たいです!」と言ってくださるコーチ仲間もいるので。

藤代 いいですね。また話を聞けることを楽しみにしています。ありがとうございました!

高島 ありがとうございます!