「不登校だった子どもの目が輝きだしたきっかけ」太田由美さんインタビュー

太田由美さん(心と体の元気サポーター☆YSY)

しつもんメンタルトレーニングを導入した陸上指導を得意とし、幼児、小学生、大人向けにレッスンを指導。ボクシングが趣味で現在、3人の子どもの母。「心と体の元気サポーター」として、多くの人がたくさんの笑顔に出逢えるよう活動を展開している。 ▶Blogはこちら

不登校だった子どもの目が輝きだしたきっかけ

 

藤代 もともとしつもんメンタルトレーニングに興味をもったきっかけは何ですか

太田 きっかけは長男の不登校です。引きこもり状態になっちゃったんです。会話はないし、何を言っても返事はないし、部屋から出てこない状態で。私も自分を犠牲にすると言ったらおかしいけど、したいこともやれないし、どんどん子どもとの距離が離れてしまいました。そうした状態が続いていくうちに、家の中がピリピリした感じになってしまって。悩んでいたときに、本屋さんで「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」の本をたまたま見つけたんです。本を読んだ後、磐田に講演会に来ることを知って「近い!」ということで行ったことがきっかけでした。

藤代 なるほど、なるほど。

太田 本でも講演会でも「自分を満たすこと」の大切さを学んで、私も好きなことをやりたいようにやろうと感じたんです。すると、私が家を空けている時間に長男が部屋から出てくることがあったんです。

藤代 具体的に自分を満たすために、どんなことからはじめたの?

太田 子どもが学校に行っていないから、私は家にいなきゃいけないと思って、大好きなボクシングの練習をやめていたんです。以前は、子どもが学校に行っている間に練習に通っていたんですが、行けなくなってて。でも、「行きたい」という気持ちを大切に、勇気を出して練習に行くようにしたんです。もちろん、いきなり行くのではなくて、練習に行くことだけは子どもに伝えることからはじめました。

藤代 ボクシングの練習に行くことは怖かった?

太田 うーん(笑)どうでしょう。でも、驚くことに、家に帰ってくると子どもが部屋から出た形跡があったんですよ!だったら私もその方がスッキリする!と思って。

藤代 なるほど。いままでは、お子さんも部屋からほとんど出なかったのに、ゆみちゃんが好きなボクシングを通じて自分を満たしていたら、帰ってくると子どもが部屋から出たっぽいなという形跡があったということ?

太田 そうなんです。

藤代 おもしろいね。

太田 帰宅すると、彼が好きなピアノを弾いた形跡があったんです。じゃあ、この方が良いなと思ってさらに続けようと思いました。

藤代 それを続けていったという感じ?

太田 そうです。続けていったらだんだん自分のストレスもなくなっていくし、発散できる感覚を得られて。家でも私らしくいられて、以前のように雰囲気が暗くなる感じが少なくなっていったんです。そんな感じになっていったらだんだん子どもが部屋から出てくるようになったんです。

藤代 へえ。そのことについて後で、彼と話をしたりしたのかな?実は家にいないほうが楽だったとか。

太田 その話はあえてしなかったです。もう学校にも行ってるんですよ!

藤代 それはお兄ちゃんは、ゆみちゃんがちょっと距離をとってくれたことで自分を出せるようになってきたのかな?

太田 なんでだろう?そのあたりはよくわからないんです。でも、当時、学校に行かない彼に対して、私は「学校くらい行きなさい」と当然のように伝えていたんです。

藤代 なるほど、なるほど。

太田 それから彼はどんどん引きこもるようになったんです。そうさせたのは私かなぁと少しずつ感じるようになりました。本を読んで、私も自分を満たすことを大切にしたい思ったので、彼にもやりたいようにやってもらおうと思い、「学校行かなくても良いよ」という話もしたんです。そうすると、だんだん会話もできるようになっていきました。

藤代 おもしろいね。当初とは真逆の考え方だよね?「学校行きなさい!」と伝えていたのに「学校行かなくてもいい」と伝えるようになったんだ。

 

私を縛っていた「当たり前」という思い込み


 

太田 私自身が「当たり前」という思い込みに捕われていたな、と感じたんです。学校に行くことが当たり前じゃないな、と。いま上手くいかなくても、先のことをイメージしたら少し力が抜けました。

藤代 「中学を卒業したらどうしたい?」と聞けるようになったんだっけ?

太田 最初は答えてくれなかったけど、私自身も彼の力になりたかったので、彼にあった学校を調べられる範囲で調べて、パンフレットをもらい、彼の部屋にそっと置いておきました。その後、それを見て自分でも調べたようで、最終的に「ここに行きたい」と言ってくれたんです。

藤代 「子どもが学校に行ってなくて心配」というお父さんお母さんもたくさんいると思いますが(2018年の時点で13万人を超える)、ゆみちゃんの話を聞いて、肩の力が抜ける人がたくさんいるんじゃないかなぁ。学校に行かず、部屋に引きこもりだった彼が、具体的にどんなプロセスを経て学校に行けるようになったの?いまは楽しく行ってる?

太田 いまは「楽しい!」と言っています。もともと、うちの子の場合は、学校の先生とうまくいかないのが最初のきっかけでした。

藤代 そうだったんだね。

太田 担任の先生じゃなくて、教科担任の先生とうまくいかなかったみたいで。でも私はなんとか行かせようと、それしか考えてなかったので、結構きつく言っていたんです。

藤代 うん。

太田 「授業だけ出なきゃいいじゃん」とか「とにかく学校行きなよ」と言っていたんだけど、一切言わないようになったこと。そして、彼の個性とか長所を伸ばしてくれる学校に出会えて、そこに入学してどんどん変わって行きましたね。

藤代 彼らしい姿に戻ってきた?

太田 そうそう。いま行っている学校がすごいあっているんだな、と感じています。

藤代 いまはどんなことが楽しそう?

太田 ピアノが大好きだから、レッスンに通いだして、なんだっけ?バンド?

藤代 うんうん。

太田 キーボードをやってます。すごいことだなーと思ってます。

藤代 それによって家族の関係も変化した?

太田 あー、もう雰囲気がぜんぜん違いますね!ピリピリ感が無いのと、長男に気を使っていた私もいたんです。学校に行く気になったけれど、またちょっとのことで行かなくなっちゃうのかな?とか、不安はあったんですが、最近はないですね。

藤代 へーすごいな。なんか妹さんもいるじゃない?妹さんにもいい影響はあった?

太田 あー妹にはあまりないかな。(笑)

藤代 (笑)もともと?

太田 なんか、仲良くないんで(笑)

 

「任せる」とケンカもすぐに解決する

 

藤代 へー。そうなんだ(笑)なるほどなるほど。他には?しつもんメンタルトレーニングを知る前と知った後で何か変化はある?

太田 お兄ちゃんのこと以外でも?

藤代 もちろんもちろん。自分のことでも。

太田 イライラが無くなりました。

藤代 イライラ?

太田 そうですね。イライラすることが少なくなったかな?子どもの運動指導をしているのですが、いろんな子がいる中で、揉めごとやケンカってあるじゃないですか?でも、「どうしたらいい?」と質問して彼らが考える機会をつくるようにしたら、子どもたちってすごいスムーズに解決しちゃう。 子ども自身も納得して謝るんです。最終的には自分が悪かったと思ったら子どもは謝るからすんなり解決しちゃう。すごく助かっています。

藤代 ほー(笑)前はイライラしたときや喧嘩がおこっていたらどうしていたの?

太田 「何してんの!?」「謝んなよ!?」と一方的に伝えていました(笑)

藤代 あーなるほど(笑)

太田 いまは一方的に伝えることをやめて、お互いの意見を聞く時間をつくった上で、「自分ならどうするの?」「どうしたらいい?」と考えてもらうようにしています。そうすることで私自身も力を抜いて関われるし、子どももすぐ仲直りするし、という感じですかね。

藤代 すごいね。それはすごい。

太田 ちょっと語弊のある言葉ですが「試せる環境」や「伝える場所」があるのが恵まれてるなと思います。

藤代 子どもたちが近くにいるもんね。あとは?他に印象に残っていることはある?

太田 ブース出展ですかね!静岡県磐田市でいろんなところでやらせてもらって、今も9月にあるイベントに出展することになりました。

藤代 おー。

太田 交流会議とかでも紹介をさせてもらって。すると、そこで違う団体の人と繋がれて「うちでもやれないか?」という話になり、そこからさらに今度は「老人ホームのお祭りとかで、やってみない?」と話がすすんでいます。

藤代 すごいね!

太田 けっこういま良い感じなんです。

藤代 良い感じだね。すごいな!

太田 そして、学校にも今度いけるよう雰囲気があるんです。

藤代 おー!

太田 静岡には、地域の大人が子どもがちにお仕事の魅力を伝える事業があって、そこの関係で、中学校とかに授業しに行けるかもしれないんです。

 

「うちでもやってくれない?」嬉しい連鎖

 

 

藤代 おーたのしみだね。今後はどんなことをしていきたい?

太田 今後は先生にしつもんメンタルトレーニングを届けたいという思いが一番あります。いろんなことに気づいてもらえるきっかけを作れたら嬉しいな。

藤代 それはどうして?

太田 自分もそうだったけれど「普通」や「一般的」と良かれと思って接してきたことが、彼には逆効果になってしまっていて。私自分は自分で気づくことで変わろう思えたので、楽しみながら取り組んでもらえるようにできたら嬉しいです。

藤代 いいね。静岡県は学校に行けない子たちがたくさんいるの?

太田 そうらしいんです。聞いた話によれば全国ワースト2位らしいんです。

藤代 うんうん。

太田 子どもたちを教えているといろんな子がいて、学校に行けない子ももちろんいます。そのきっかけが先生といことも多いんです。

藤代 そうなんだね。

太田 部活の顧問の先生から傷つく言葉を言われて、学校で会うから行けなくなっちゃう子もいたんです。

藤代 なるほどね。その子が「学校に行かない」という選択をするのは尊重したいけれど、「行きたいのに、行けない」のは気がかりだということだよね。他にはやっていきたいことはありますか?

太田 運動指導の対象がいままでは子どもだけだったんですよ。でも、最近ちょっとずつ大人のレッスンを始めたんです。その中でしつもんメンタルトレーニングのアクティビティを最初にやってからレッスンをすると、一時間が楽しくてあっという間に終わっちゃうんです。こうした体験をもっといろんな所でできたらいいなと思っていたところです。

藤代 良いね!ゆみちゃんとおなじように「子どもが学校に行けていないこと」に悩んでいるお母さんがいたとしたら、その人に伝えたいことはありますか?

太田 子どもの気持ちも認めてあげて欲しいなと思います。親としては「学校に行って欲しい」という気持ちはあるけれど、そこを一回抑えて、子どもが「どうしたいか?」を聞いてあげた方がいいなと伝えたいです。あとは「自分を満たすこと」ですね。

藤代 そうだよね。僕たちも我慢しているとさ、相手にも多くを求めちゃう。私だけ我慢しているのにって。お母さんも我慢のエネルギーになっちゃうから、どうしたい?と聞けないことは多いかもしれないよね。

太田 聞けないですね。こっちだって我慢してんのにとなっちゃう。

藤代 そうそう。でも満たされてると聞けるよね。

太田 そうなんです。

藤代 その辺は実体験がそうさせていると思うんだよね。ありがとうございます!