第1回 池上流子育て~親子の真剣勝負~ 池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

【孫がサッカースクールへ。そこで目にした光景とは?】

私は大阪生まれの大阪育ちですが、ジェフ千葉にいたこともあって、10年間千葉に住んでいました。連れ合い(妻)はすれ違いで大阪に住んでいたりして単身赴任だったときもありますが、今は一緒に暮らしています。

私には娘が二人います。今、孫は5人でそのうち3人がサッカーをしていますので、孫たちに「じいじ、サッカーしよう」とか「サッカースクールに迎えに来て」と言われることもあります。

孫が行っているサッカースクールは5面くらいあるフットサル場でやっていて、時間貸しなので5面すべて違うサッカースクールなんです。孫がいるスクールはごくごく普通の日本のスクール。「あんなことしてお金とってるんや・・・」と正直思いながら見てました(笑)。

(ふと見せる「じいじ」の顔)

隣はスペイン人がやっていたスクールでした。するとね、やっている内容が全然違うんです。
全然違うといっても、難しいことをやっているわけではなく、すごいシンプルなんです。片方は一人一人自分で何かする。それで自分の技術を上げる。でも片方は二人で息を合わせてやらないといけないトレーニングばっかりです。
「仲間と一緒に行う」ということは私がずっとやってきたことなので、ここ(スペイン人のスクール)でもそうなってるんだなあ、面白いなあと思って見ていました。

(画像はイメージです)

 

【娘との思い出~ベビースイミングも実験!?~】

千葉には10年いましたが、娘たちを育てて、残念ながら娘たちの思春期にはなかなか一緒にいてやれなかったことが非常に申し訳ないなあと思っています。でも、娘たちが小さい頃、ほんとにいろんな出来事がありました。

私は大阪体育大学出身なので、「人間ってどんな風に育つのかなあ」と不思議だったんです。こんなちっちゃい人間が動くんです。「どこにモーターがあるかなあ」とか「エネルギーはどっから来てるんだ?」とか考えていたんです(笑)。

上の娘は33歳で、娘が小さい頃は「ベビースイミング」がすごく盛んでテレビでもやっていました。人間の子どもはお腹にいる間は水の中にいるからすごくいいと言われていましたよね。

子どもが生まれて、ベビースイミングが盛んで、「よし。本当にテレビでやってるようになってるんかなあ」と我が子をプールに連れて行きました。ポチャンとプールに入れて、私はゴーグルをつけて潜ってみる。そうすると、テレビで伝えていたみたいに、口は「んっ」てつぶるし、目はパチって開いてるし、手と足が動いて、水面に出て来た途端、「パーッ」と息をするんですね。「本当にするんや!もう一回したろ」と。 市民プールに連れて行っていましたが、まわりにいた人たちは「この人何してんねん?」」と不思議に思われていたみたいです(笑)

でも、ベビースイミングは途中からなくなっていきましたよね。あまり盛んに言われなくなりました。私の最初の勤務先はYMCAだったのですが、日本のYMCAはアメリカから伝わってきたものです。YMCAは本当にすごくて、例えば、「水泳の研究をするので大学の先生たち集まりませんか?」と声かけると、もうアメリカ中からトップレベルの人が来るんですよ。それでいてYMCAはお金を払わない。ボランティアなんです。そこで出た研究結果によってYMCAがやることがどんどん変わってくるんです。

その中で、「ベビースイミングが良くない」ということがわかって来ました。なぜかというと、小さい子たちは泳ぐと水飲むんです、勝手に。そうすると血液の濃度が下がるんです。何が起こるかというと、体が小さいから、血液の濃度が下がってくると酸素が脳に行かなくなるんです。「脳障害を起こす」ということがわかって来て、YMCAは25年ぐらい前からベビースイミングをやめたんです。
あまり知られていないですが、そんな時代もありました。

 

【マンションでの子育て~教育は環境を整えること~】

ベビースイミングのように、「子どもたちは本当にどうするのかなあ」と思って育ててきました

ある日、私の寝室で子どもがドタンバタンと大きな音を立てていました。私の家はマンションなので、大きな音を立てられると下の階の人に申し訳ないですよね。

見に行くと、押入れからジャンプしているんです。子どもたちはよくしますよね。
ところがどっこい、うちの子どもは天袋から飛んでいました。「えっ!なんでこんなとこ登るの?」と。
押入れダンスは二段目に置いていたんです。その引き出しを階段状に開けて、登っていたんですね。それ見た途端、「天才やなあ」って(笑)。

 

(子どもたちは天袋(一番上)から飛び降りて遊んでいたという)

でも、大きな音を出されると困るので、私は布団を全部出して来て積み上げました。「ちょっと飛んで見て」って。音が出ない。「よし、これからこれでいこう」って(笑)。 親子でそんなことしてました。

下の娘は、そういうのが嫌いで、お人形とか絵を描いたりするのが大好き。今でも全部覚えていますが、ある休みの日、下の娘を見ていたら、リビングの壁に絵を描き始めたんです。「あっ。ちょっと待って」と止めたんですよ。
止めないとね、離婚問題に発展しますのでね(苦笑)
「ちょっと待ってよ」と止めました。その次、私がやることとしたら・・・。 
さて、みなさんに1問目です。私は何をしたでしょう?

娘を止めました。
先ほどの話を聞くと「天才やな」と言っているので、
私が叱る人間じゃないというのはおわかりかと。あることをしたんです。
何をしたと思いますか?なんでも結構です。どうぞ。

(参加者)「自ら書いた」。
それこそ離婚です(笑)大変な騒ぎになります。他にどうですか?

(参加者)「ソファーに紙を貼った」
なるほど。他にどうですか。

(参加者)「壁に額縁のように書く」
壁に私が縁を書くということですか?それも離婚問題です(笑)
その時代にね、サンゲツの何とかがあればよかったですが、その時代はまだなかったですからね(笑)

紙を貼ったのは正解です。リビング中に紙を貼りました。「よし、書いていいよ~」というと、娘は書かなかったんですね。どっか行っちゃうんですね。「え~」と探し回りました。そんなに広いマンションじゃないんですが・・・。最後にトイレをヒュッと開けると、トイレの壁に書いてるんですね。思わず言ってしまいました、「天才やね」って(笑)

では2問目です。
どうして娘は書かなかったんでしょう?せっかく紙を貼ったのに。
さあ、娘が書かなかった理由は何でしょう?そんな真剣に考えなくてもいいですよ。
何言っていただいても大丈夫です、どうですか?

(参加者)「紙じゃなくて壁に書きたかったから」
なるほどね、でもそうじゃなかったみたいです。

(参加者)「大人が書けと意思表示をしたところには書きたくなかった」
なるほどね、書いていいよじゃなくて自分でやりたかった。

(参加者)「自分の意思で書きたかった」
ちょっと違う。どうでしょう?

 

実は、貼った紙が悪かったんです。
リビング中に貼ろうと思うと、さて何がありますか?
(会場)「新聞紙」
ですよね。それしかないじゃないですか。
新聞紙貼ったら、「白くないから嫌」だったんですよね。

ここで皆さん、気づくことありますか?
今の教育、なんて言われてるかご存知ですか?
教えるんじゃないんです。「環境を整える」と言われているんです。
環境を整えたんですよ(壁に紙を貼る仕草)。
でも間違ったんですよ。環境の整え方をね。
そうすると子どもは違うことを学ぶんですよ。

では、うちの娘は何を学んだかというと、「書ける場所を探せること」を学んだんです。
だからトイレの壁に書いたんです。これはね、あとあと、「いやいや、お前ほんま天才やな」と思いました(笑)。

あと、マンションの屋上にダンボールで家を作って遊んでいたこともありました。どこからも見えないんです。最後の階段で体を乗り出して見たら、「あっ!あんなところに!」みたいな感じです。
ところが、うちのマンションの屋上は屋根型なんですよ。だから、コロンって転がると、コロコロピューと(落ちてしまう)。
8階から落ちたら柵もない。そんなところに作って遊んでいたんです。管理人のおじさんが飛んで来まして、「池上さん!大変なところで遊んでいます!」と。

見に行ったんですが、娘にまた言ってしまいました。「天才やな」と。
でも、「友達だけは呼ばないで」って。自分一人で落ちるのは仕方ないけど、友達落ちたら困るからって。そんな話をしたことがあります。私の子育てはそんな感じだったんですよ。

 

【子育ては親子の真剣勝負】

私は「親子の真剣勝負」という言い方をよくするんです。子育ての真剣勝負というのは、子供が何かした時に、「じゃあお父さんはこうするけどどう?」と言う。子供はまた違うことをするけれど、それについてまた私は「それならこうするよ」というやり合いだと思うんですよ。
「こうしなさい」じゃなくて、「こっちから攻めたらどうする」「そっち行く」「じゃあこっちから行くけど」そんなことなんです。

そういうやりとりをしていると、(親が)負けちゃうときもあるわけですよ。「なるほど。そんなことするか。すごいよね」と、やっぱり思っちゃうんですよね。
でも、ごくごく普通の親でいると、そこまで行くと「やっぱりうちの子すごいかなあ」と思って間違っちゃうことがあるわけなんですよね。もっとすごくなって欲しいと思ったら、その上を行かなきゃいけないんです、大人は。

それはね、何かを知っていなければいけないかというとそうではなくて、このあといろんなお話をする中にヒントが出てくるのかなあと思います。

学校のPTAとかで呼ばれたときは子育ての話をたくさんしてきました。今日皆さんに質問があったように、「今日この講演会が終わってどうなっていたら最高ですか」という話でいうと、私が保護者の方に言うのは、肩の荷が降りて、「そんなに頑張らなくていいやん」と思っていただいたらいいなあと思って話を進めることが多いのです。

~つづく~

 

第1回から5回までの記事はこちら

第1回 池上流子育て~親子の真剣勝負~ 池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

2017.08.02

第2回 私がやめた”2つ”のこと 池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

2017.08.23

第3回 正義感は誰もが持っている。でも、育てないと大きくならない。 ~池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

2017.09.11

第4回 自分からやろうとしたとき、子どもたちは変わる~池上正さんと学ぶ「考える子どもを育てるヒント」講演会より

2017.09.17
[kanren postid=”8272

ぜひあなたのSNSでシェアしてください!