「こうあるべき」を手放し、自然な自分へ 渡辺ゆみさんインタビュー

渡辺ゆみさん

岩手県盛岡市出身。宮城県在住。 20歳の長女から令和元年ベビーまで、4人の子を持つママ。 放課後デイサービスの指導員として、発達凸凹の子どもたちや保護者の方をサポートしている(現在、育休中)。
「お家の中のママやパパが笑顔でいてほしい!」と願い、 一つでも多くの笑顔が増えるようお手伝いできればという想いで活動中。 それが「すべての子どもが生まれてきて良かったと思える世界」 につながっていくと信じている。

 

 

「こうあるべき」を手放し、自然な自分へ

藤代:普段はどんな活動をしていますか?

渡辺:同じしつもんメンタルトレーナーのさいちゃん(細川さいこさん)と「チームさいゆみ」を組んで、月1回講座を開いています。保護者向けや、中学生以上を対象にした講座をメインに行っています。後は、個人的にお話があれば社内研修に行ったり、講座を行ったりしています。

藤代:もともと興味を持ったきっかけは何だったの?

渡辺:私は二十歳で結婚と出産をしているんです。子育てをしていくうえで、とても若いお母さんみたいに見られることが多かったんです。子どもが風邪を引いて病院に行ったら、「このくらいで連れてこなくていいよ」と言われたり、「馬鹿にされている」という思いをどこかで持っていました。だから、育児書をたくさん読んで勉強していたんです。その時に「コーチング」があると知りました。その時はそれだけだったんですが、育児書をたくさん読むようになったことがメンタルトレーニングに興味を持った最初のきっかけですね。「しつもんメンタルトレーニング」に出会ったのは、友人であるさいちゃんが紹介してくれたことがきっかけです。

藤代:最初聞いたときはどんな印象でしたか?

渡辺:聞いた時がなかったので、「しつもんって何?」という感じでした。私がするの?されるの?と。さいちゃんが凄く独特だったんですよ。子どもたちが同じスポーツ少年団でソフトテニスをやっていて、そこにさいちゃんがいた。周りのお母さんたちとはちょっと違い、いい意味で独特な雰囲気を醸し出していたさいちゃんの発想に興味があって、「さいちゃんがやる講座なら行きたいな」と思ったんです。

藤代:それで参加してみたんだ。

渡辺:はい、そうですね。

藤代:その後、ご自身で学び続けて、学ぶ側から発信する側になって自分自身の変化はあった?

渡辺:凄く変わりました。「こうあるべき」みたいなものがどんどん外れていって、ナチュラルになったと思います。

藤代:例えば具体的に覚えていることはある?

渡辺:例えば、私はお母さんなので夜は出掛けてはいけないと思っていた。「自分が受けたいセミナーがあるから東京に行く」なんて全然考えられなくて、「お母さんだから」「妻だから」というものに勝手に縛られていたんだなと気付きました。

藤代:勝手にそう思っていたの?

渡辺:そう。勝手に自分はそう思っていたんだけど、「行きたいんだけど」と旦那さんに言ってみたら、「行けば?」と言われて(笑)。「行っていいんだ!」と驚きました(笑)

藤代:結婚して出産して、旦那さんもそう思っているに違いないと思って、遠くに行くことを控えたり、好きなことを控えていたんだね。いざ、こういう講座やイベントがあって行きたいんだよねと言ったら、行けば?って感じだったんだ(笑)

渡辺:そう。行けば?って(笑)。「行きたい」と言うこと自体も勝手にダメだと思っていたから、言うのもいいんだなと。

藤代:今思えば、どうしてそう思い込んでいたと思う?

渡辺:「いいお母さん」、「いい妻」になりたかった。いい評価をされたかった。だから子どもたちにもいっぱい勉強してもらって、いい学校に入ってもらいたいとすごく思っていたし、その時は自分への評価をすごく気にしていましたね。

藤代:なるほど。自分勝手に自分の好きなことやっているお母さんはダメなんじゃないかと思っていたということ?

渡辺:そうそう。

 

「子どもの結果=自分の評価」だとばかり思っていた

藤代:でも勇気をもって言ってみたら、それは思い込みだと気づいたんだ。他には、自分が覚えている変化はある?

渡辺:子どもに対する関わり方もすごく変わって、やりたいことやればいいと思えるようになったし、そんなに上手くいっていない時でも、そんな深刻にならずに見ていられますね。前だったら、「受験落ちたらどうすんの!!」と半分脅しみたいな感じだったんですが、今は「やんなきゃやらないでいいんじゃない?」みたいな感じで。もっと言うなら、「落ちたら落ちたでそのとき考えればいいし、それも意味があるんじゃない?」と(笑)。だいぶ違いますね!

藤代:それはどうしてそんなに変化したんだろうね。

渡辺:子どもの評価が自分の評価だという考えが間違っていると思うし、失敗したことがダメというわけではなくて、「失敗したから次がある」と思えるようになった。失敗したときはつらいかもしれないけれど、その先がある事を知っているから「大丈夫だよ」と言ってあげられるようになったことが大きいかなと思います。

藤代:さっき言っていた言葉が印象的なんだけど、「子どもが評価されることが自分の評価だ」と思っていたんだよね。子どもが何か結果を出さない限り、自分が評価されないんではないかということだよね。

渡辺:そう。だから生徒会とか立候補したほうがいいんじゃない?部長やったらいいんじゃない?と(笑)

藤代:あはは!(笑) 生徒会長や部長は評価されがちだもんね。

渡辺:いま思えば、そんなことはないですよね(笑)。子どもはそれを経験しただけ身にはなっていると思うんだけど。

藤代:なるほどね。それはどこからきていたんだろうね。

渡辺:私は今ままでの学歴も普通で、高校卒業して、就職して、何もないと思っていました。何か人より秀でたものもないとずっと思っているから、「私なんて」といつも心の中で思っていました。そういうところを誰かに補ってもらおうとしていたのかなと感じます。

藤代:自分になかなか自信がもてずに、何もないと思っていたからこそ、それを頑張って補ってほしかったと。楽観的になれたということもあるかもしれないけど、裏を返すと、自信を持てたからこそ補ってもらう必要がなくなったとも思える。そのへんはどう思う?

渡辺:「自信があります」と堂々と言えるレベルまでは達していないけれど、「できない自分がいてもいい」とは思っています。前はできないことがあることがダメだから、それを隠してみたり、できるふりをしてみたりしていましたが、今は「できないなら誰かにやってもらおう」「できない自分もOK」と思える。そこが結果的に自信につながっていると思います。

藤代:僕もそうで、恐れとか、自信がないから何かで補ってもらおうということはたくさんあった。自分の良いところは伸ばして、悪いところはあんまり認めたくないと思っていたよね。だけど、例えば僕はいい意味でも悪い意味でも色んな考えが浮かぶんだよね。とても情熱的なことを感じる一方で、冷静に物事を見ている自分もいるのね。そうした時に、情熱的な自分は好きだけど、冷静にのめり込めない自分が嫌だった時期もあったんだよね。冷静な自分を追いやって情熱を燃やしたいと思っていたけれど、それって苦しいんだよね。自分の一部として認めていないから。ネガティブになっちゃうことは誰しもあるし、人の悪口を言いたくなることだってある。それがダメというわけではなくて、それを今自分が感じているんだということを認めないと、本当の意味で自分を知る、自分を生きることにはならない。ゆみさんはそういうことができるようになってきたんだね。

渡辺:本当にそんな感じですね!

 

「大学中退を恥ずかしく思っていないから」と言う長女が教えてくれたこと

藤代:そうすると、子どもたちとの関わり方も変わってくる?

渡辺:そうですね。旦那さんとも仲良くなったし。

藤代:仲悪かったの?(笑)

渡辺:一時は顔も見たくないし話もしたくない時期もあって、なんでこの人と結婚したんだろうと思う時期もあって(笑)。そういう時期もあったけれど、今は彼の発言に対しても「しょうもないな」と笑えるし、全然違いますね。

藤代:すごいね。自分自身の変化じゃなくてもいいんだけど、他に何か印象に残っていることはある?

渡辺:一番上の娘は19歳なんですが、大学受験のときに失敗したんですね。国立を全部落ちてしまって、全然行こうとも思っていなかった私立の大学に唯一受かった。そこに入ることにしたんですが、1ヶ月くらい通って、「もう行けない」と大学を辞めちゃったんです。前の私だったら辞めることを許さなかったと思うし、入学金も前期の学費も払っていれたのにと前は思っていたけれど、今回は「辞めたいなら辞めなよ」と思って。娘も「じゃ、辞める」と言って。次のやりたい事は見つかっていないですが。

「この話を講座で話してもいい?」と娘に聞いたんですね。そしたら「全然いいよ!私恥ずかしいと思ってないから」と言ったんですよ。その時に、「あ~、良かった!今までの関わり方が合っていたんだな」と思ったんですよね。国立を全部落ちてしまったこと、大学を中退してしまったこと。それを隠したいと思う人はたくさんいると思うんだけど、うちの子は恥ずかしいと思ってない。「別に言っていいよ」と。そう言ってくれたことで、「まわりも変わってたんだ」と、今年1番と言っていいくらい印象に残りました。

藤代:娘さんは大学を1ヶ月で辞めるってすごい勇気がいることだと思うんだけど、それだけ僕たち大人が、まわりやみんなと同じようにすることが大事だと言ってるということだよね。それを外れる。1ヶ月しか経ってないからわからないじゃないかと多くの人が言うと思うんだけど、「どうして辞めたいの?」と聞いてもらえたということだよね。だから恥ずかしくないと言えたんだと思うよ。

渡辺:そっかそっか。そうだったのか(笑)

藤代:いや、わからないけど(笑)

渡辺:そうですかね。1ヶ月間、言いたくても言えなかったことがあったのかなと。「そういう風に思えるならこの子は大丈夫だ」と思えたことは今でも覚えていますね。

藤代:時間がたったからこそ聞けることもあるだろうから、どんな事を考えていたの?とか、今思えばあの関わり方は嬉しかった?嬉しくなかった?とか色々聞けるといいかもね。

渡辺:そうですね。

 

自分を受け止めてくれる仲間が全国にいることの嬉しさ

藤代:いいね。しつもんメンタルトレーニングを受けてみて、全国に仲間ができて良かったなと思うことはありますか?

渡辺:1番は仲間ができたことですね。ただの仲間じゃなくて、絶対に受け止めてくれる仲間。絶対に「ゆみちゃん、それはないよ」と言わない仲間ができたことはすごく特別なことで。「そっか、ゆみちゃんはそう思うんだね」と言ってくれる仲間ができたことがすごく心強いし、すごく良いことだなと思いますね。

藤代:今後はどんな事をしていきたいですか?

渡辺:これが仕事になったらいいなといつも思っています。月1回やっていると3人集まらなくてうまくいかない時もあったり。集客的には順調にいってないように見えるけれど、来てくれた人はみんな喜んでくれる。なので、これからもどんどんやっていけたらいいなと思います。

藤代:いいね。では、インタビューはここまでにします。今日はありがとうございました。

渡辺:ありがとうございました。

 

*2019年12月に第4子を出産。インタビューは出産前に行われたものです。