「何度、言ってもやらなかった子どもが「勝手に練習」しはじめる」山田 裕介さんインタビュー

山田裕介さん(しつもんメンタルトレーニングトレーナー)
製薬会社を渡り歩き、4社15年間勤務。勤務先の買収を機に「退職か継続か」の選択を求められるも独立を決意。家族の応援、妻のサポートなどを力に「一度しかない人生、楽しくしよう。自分が人生の主人公になって輝こう!」と決断。ビジョンは「大人が自分らしく生きて輝ける社会を創る」▶facebookはこちら

 

「今日は何点だった?」自分のものさしをつくる

藤代 しつもんメンタルトレーニングを知ってくれたきっかけは何でしたっけ?

山田 きっかけは3年前に藤代さんの1冊目の出版記念講演会に行ったことです。その時には、子どもがサッカーをやりたいと始めた頃でしたが、僕が指導をすればするほど本人のやる気がなくなっていったんです(笑)

藤代 (笑)それはコーチとして?お父さんとして?

山田 父としてですね。

藤代 お父さんとして力になりたいと思って指導をするんだけど、本人はやる気がまったく出てこない、と。

山田 やる気が出ないどころの騒ぎじゃないんです。好きやのに、どんどん嫌いになっていくんです。

藤代 へえ。それはどうしてそう思ったの?「嫌い!」と言うわけじゃないでしょ?

山田 嫌いと言うわけじゃないですけど「目が死んでいく」というか。

藤代 (笑)

山田 試合に出てもおどおどしてるし、おどおどすればするほど僕も言うじゃないですか。「なんでお前やる気ないねん?!」みたいな。

藤代 そうすると?

山田 そうするとさらにやる気がなくなっていく、という(笑)

藤代 (笑)悪循環になるんだね。

山田 すごい悪循環やったんですよ。でも、その時に藤代さんが言う「尋問するとやる気がなくなる」ことに気がつかなくて。講演会で質問したら「子どもが試合が終わってから、今日の自分に点数をつけるとしたら何点だった?と聞いてみてください」という話があったんですよ。その時にハッとして。そっか、子どもに何点だと思う?って聞いたことないなと。それで、実際に試合の次の日に聞いてみたら、信じられないくらいな点数やった(笑)

藤代 (笑)ちなみに他者評価は何点くらいだと思ってたの?

山田 僕が思う評価は「50点」、良くて「60点」かなと。

藤代 彼の自己評価は?

山田 「90点」でしたね。

藤代 おー、結構開きがありましたね。

山田 いやいや、僕びっくりしたのと同時に「あー、これってやる気なくしてんの僕のせいやったんやな…」と思って。そうか、息子は自分に「90点」やりきったと感じているのに、僕が「50点やっ」と言ってしまうから「なんやねんこいつ」「親父が言ってること信じられへんわ」となってて(笑)

藤代 (笑)

山田 親に不信感しかないじゃないですか。でも、僕は一生懸命アドバイスをしているつもりで話していたんです。

藤代 うん、うん。良かれと思ってね。

山田 なのに「目が死んでいるのはなんでやろ?」とずっと心配してたのに「原因ここにおった!」と思って(笑)

藤代 (笑) なるほどなー。多分、講演会の時も話したと思うけど、僕たちって他者評価の機会が圧倒的に多いですよね。学校の通知表もスターティングメンバーも選ばれるのも他者評価。基本的に監督、コーチが選ぶ。なので「自分で自分を評価をする」という機会があまりない。以前に、フィンランドでは「他者評価と自己評価をすりあわせる機会をつくっている」と学んだことがあって、実際に僕も取り組んでみたんです。すると、子どもたちの考えとギャップがあったんですよ。
今日はいまいちだったなーと思ってる子に「今日、どうだった?」と聞くと笑顔で「100点!」と言うんですよ(笑)ちょっと100点はないでしょと思いつつも「どうして?」と聞いてみると「だって、いつもシュート打てないのに今日はシュート1本打ったもん!」と言うんです。彼にとって「できた!」「やった!」という感情は次につながるじゃないですか。僕がそこで「全然できてなかった」と伝えると彼の次へのやる気は奪っちゃう。これはひどいことをしていたなぁと思いましたね。まさに同じことですね。

山田 まさにほんまに同じことが起きてて驚きでしたね(笑)「試合どうやった?」「今日どうやった?」と色々聞いてるつもりやったのに、僕は彼の答えを自分のものさしでジャッジしていた。「なんでできへんねん」とか「なんであそこでシュート打たへんねん」と。これって質問してるんじゃないんや…と思って(笑)

藤代 (笑)ちなみにそう聞くと子どもはどうなるの?

山田 もうひたすら言い訳だけです。

藤代 「だって!」ですよね。

山田 そう。しつもんメンタルトレーニングのワークで体験するじゃないですか。「やばいひたすら言い訳返ってきてるわ」と思って。

何度、言ってもやらなかった子どもが「勝手に練習」しはじめる

 

藤代 それからは、自分自身をどのように変えようと思ったの?

山田 どういうふうに変えようと思った?うーん、あ、あれです。ワークでもやりますが「欠けてるところ」をめっちゃ見てるということに気づきました。普段から自分や子どものの欠けてる部分に着目してるなと。

藤代 自分自身に対しても?

山田 自分自身の欠けてるところばっかり見てるから、人の欠けてるところが見える。さらに僕、自分ができないからこそ「これはできるようになったほうがいい」と思ってるんやなと感じたんです。でも、自分の良いところを見るようになったら、自然と子どもの良いことろも見えるようになってきたんですよね!

藤代 へえ、おもしろい。順番があるんですね。いきなり子どもの良いところを見つけるんじゃなくて、まずは自分自身の良いところを見つけることによって、自然と子どもの良いところも見えるようになってきた、と。

山田 そうですね、そうですね。

藤代 すると子ども自身に変化はありましたか?

山田 最近、サッカーが好きになってきたと思うんですよね。

藤代 へえ、どうしてそう感じるの?

山田 試合に出ても自信が違うんですよ。できるとか、できないといったこと以前に「試合を楽しめてる」というか。試合に行く前に「今日はどうするの?」と質問するようにしてるんですよ。ある日は「今日はシュートを打つ!」と自分で目標を決めて試合に向かうようになりました。自分にある課題をひとつずつクリアしていくことが楽しめているんじゃないかと思います。

藤代 それはどこから?表情とか全然違うということですか?

山田 表情が違いますね!

藤代 以前は目が死んでいたじゃない?いまは生きていますか?

山田 はい、今生きています(笑)あと家で練習するようになりましたからね。

藤代 なるほどね。前は「なんで練習しないんだ?!」と言ってもやらないのに。

山田 そうそう。

藤代 いまは勝手にやっていると。

山田 もちろん僕が期待しているレベルとは違うけど「上手くなりたいな」とか「こんな練習をしてみたらいいんちゃうかな」と試行錯誤している姿が親として見ててうれしいですね。

 

 

お母さんもお父さんも「みんな悩んでる」

 

藤代 いいですね。講座も開催していますよね?そこに来てくださった方とか関わり合いの中で感じていることはありますか?

山田 そうですね、自分の体験談をお伝えすると、同じように悩んでいる人がめちゃくちゃ多いことに気づいたんです。

藤代 過去の自分と同じように関わっている人が、まわりにも沢山いたんだ?

山田 そうです、そうです。「なんでできひんねん!」と言ってる方が多かった。自分の期待を子どもに押し付けてるというか。期待が大きいからから「どうしてできないんだ!」とついつい感情的になってしまう。例えば「HOW(どのようにすれば?)」と「WHY(なんで?)」といった、効果的な質問と尋問の違いをお伝えするじゃないですか。WHYで聞くと言い訳が出てきやすいから、効果的な質問であるHOWで聞くことで子どもからアイデアが生まれてくる。でも、HOWの中にも「なんで?」に聞こえる質問ってありますよね?「私はHOWを使ってます」という方がいるんですけど、よくよく詳しく聞いてみると結局、尋問しているというパターンがあるんです(笑)

藤代 そうですよねぇ。僕自身も当時「なんで?なんで?」と聞いていた過去があったから、HOWを活用していこうと思ったんですけど、僕らの中に「コントロールしたい」とか「操りたい」という思いがあると「どうしたらいいと思う?」と問いかけても子どもからすると「WHY」で聞かれているのと同じように感じるんですよね。

山田 いやーそうですよね。

藤代 子どもたちからするとおなじ質問なんですよ。結局「やらなきゃいけないんでしょ?」「どうせ答えたって怒られるじゃん」それはよくあって、企業研修とかに来て下さる方もいるんですけど、毎日ね、怒ってる上司の方がいたとして、研修を受けた次の日に「どうしたらいいと思う?」と部下に聞いたと。そうしたら「何も返ってこなかったぞ!」と。それはそうで、質問だけ変えればいいというわけではなくて日々の関係性が重要ですよね。

山田 確かにおっしゃる通り。

藤代 講座に来てくださった方々はどんな気づきをもって帰っていきますか?

山田 もしかしたら自分の質問が間違っているから、子どものやる気を奪ってる可能性もあるし、自分に対して欠けている部分ばかり見てしまっていることに気づいてくれて「家で早速やってみます」とか「自分の良いところを探す時間をつくってみます」書と言っていただける人が多いかなと思います。

藤代 なるほどね。結構、地域の近しい人に実践しているんですよね。

 

 

「自分らしく生きるコミュニティ」をつくりたい

 

藤代 他に実践してみて、印象に残っていることありますか?

山田 僕もまだまだ未熟ですが、ふじしーや協会のサポートが手厚いことに助けてもらっています。30日の無料コーチングもあるし、過去の実践動画も載っけてくれるじゃないですか。映像を観て、準備してから講座を実施するようにしているんですが、まずは型通りにきっちりやれば参加者のみなさんはとっても満足してくれる。講師や「伝える経験」のない初心者に優しい環境がすごい助かってます。

藤代 インストラクターの皆さんが活躍してもらえるように協会のサポートが役立ってる?

山田 そうです、そうです。すごい上手くできてるなと、言うたら失礼ですけど。

藤代 いやいや。最初は何もなかったんですよ。まだまだ若い協会だから手探りなんです。インストラクターのみんなから「こういうのが欲しい」とか「これがいけてない」とか希望を聞くようにしているんです。それと同時に「協会がすべて用意する」のではなく一緒につくっていけたらいいですよね。

山田 講座をやる上ですごく参考になりました。型があるおかげで良い反省もできるし、他の方の講座を見て、言い回しや伝え方を工夫することもできる。

藤代 なるほど。それはよかった。インストラクターのみなさんは全国各地から来てくれる。今後はコミュニティーとして「インストラクター同士」が出会う機会ももっともっと増やしていきたいなぁ。しつもんメンタルトレーニングを通して新しいご縁はありましたか?

山田 先日、お母さん達に講座を開催したんですけど、お母さん達ってママ友以外に知り合う機会が少ないそうなんです。ですので、今後はしつもんメンタルトレーニングを受講したお母さんたちが参加できる「お茶会」を開こうと思っています。共通の学びをした人同士がつながったり、日々を振り返る場を作ろうと思っているんです

藤代 おーいいですね。講座を受講して終わりではなくて、期間を開けてどんな実践をし、どんな学びがあったかを報告しあうお茶会をやると。

山田 そうです。

藤代 それはいいなー!

山田 講座を受けただけじゃもったいないと思っていて。どんな気づきや発見があったのか僕も知りたいですしね。

藤代 インストラクター同士、トレーナー同士のご縁はどうですか?

 

 

山田 同期の仲間と大阪大学で開催されたセミナーを機にちょこちょこ連絡は取ってるんです。今度、藤代さんの講演会をやるからお手伝いしてもらえませんか?と声も掛けさせてもらってます。

藤代 そうだ、阪大も来てくれましたね。阪大のセミナー(イノベーションを生む7つの質問)はおもしろかったですよね

山田 めちゃくちゃおもしろかったです。

藤代 大学生の子達も目的意識を持ってる子たちが多く参加してくれて、とってもおもしろかった。

山田 その阪大の学生と繋がって、たまに会ったりしています。

藤代 えー(笑)僕は1回も会ってないです。すごいなー!今後はどうしていきたいですか?

山田 僕が知っている素敵な方にインタビューをしたいと思ってるんです。それによって、人の才能を発見したり、行動を後押しできるようなものを作れないかなと思っています。また、先ほどのお茶会じゃないですけど、それを少しずつ広めてコミュニティを作りたいなと思っています。

藤代 どんなコミュニティーにしていきたいですか?

山田 協会が掲げている「1人でも多くの人が自分らしく生きれる世の中」というビジョンを本当に実現したいと思っていて。そのためのコミュニティーというか、自分らしさを発見するためのコミュニティーをつくりたいと思っています。個人的には、大人の遊ぶ場がなくなってきていると感じているので、イベントやBBQなど、コミュニティの仲間同士がつながる機会をつくりたいですね。また、まったく違う業界の人と繋がれたり、話ができる機会がほしいと感じているので、そういった繋がりを作っていきたいなと思っています。

藤代 いいですね。インタビューありがとうございます!

 

 

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤代 圭一

一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。 しつもんメンタルトレーニング主宰。   「教える」のではなく「問いかける」ことでやる気を引き出し、 考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。 全国優勝チームなど様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。   著書に 「スポーツメンタルコーチに学ぶ『子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)" 「サッカー大好きな子どもが勉強も好きになる本」(G.B.)「惜しい子育て」(G.B.)「『しつもん』で夢中をつくる! 子どもの人生を変える好奇心の育て方(旬報社)」がある。