ひとりで歩くのをやめて、共感者と歩む。播磨 正浩さんインタビュー

播磨 正浩さん(3児のパパ・しつもんメンタルトレーニングインストラクター・小学校教諭)

高校時代に1年米国に留学。その後、AO入試にて英語系の大学に進学するも、塾での出来事をキッカケに、京都教育大学へ編入。公立小学校に10年勤め、1年目に大和ミニバスケットボールクラブを立ち上げる。池上正氏と藤代圭一氏との出会いから、勝利至上主義から「自立した選手・チーム」に舵を切る。その後、8ヶ月の育児休暇を取得。休暇中にであった方々との縁で、静岡県の私立に転職。現在は、IB(国際バカロレア)教育の実践と育児を楽しみながら、新たなチームにて指導に携わる。

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保護者の「厳しくしてください」に応える葛藤

 

藤代 いまは、どんな活動をしていますか?

播磨 指導していたミニバスチームを転職に伴って辞めたんですけど、いま静岡県で新たなチームに声をかけて頂いたんです。実は、いまもミニバスの指導をさせていただいた後なんですよ。

藤代 そうなんだ。今日も今まで。お疲れのところ、ありがとうございます!

播磨 いえいえっ。

藤代 僕は知っているけどみんな知らないから説明すると、大和ミニバスは奈良県のチームでしよね。それで転職で静岡県に?

播磨 はい、そうです。

藤代 先生ですね?

播磨 先生です!公立の先生を辞めました。

藤代 公立の先生を辞めて、いまは私立の先生?

播磨 そうです。私立に行きました!

藤代 もともと、しつもんメンタルトレーニングを知ってくれたきっかけは何だったんですか?

播磨 たまたまfacebookで見かけたんですよ。サカイクさんの投稿だったかな?藤代さんが投稿していたのかな?違うかな?(笑)

藤代 まぁ、何かの記事で見かけてくれたってことだね(笑)

播磨 そう(笑)何かの記事をきっかけに藤代さんのメルマガに登録したら、すごく面白いなーって思ったんです。そして、1ヵ月くらいしたら「大阪で食事しませんか?」というメールが届いたんですよ。

藤代 あーそうだっ!!

播磨 それで、僕は興味を持った人には会いたいタイプなのでメールしたんです。

藤代 おーー。

播磨 藤代さんに「行っていいですか?」ってメールしてみたら「来てください!」って返事があって、食事の席でお会いしたのが初めてですかね。

藤代 いまは食事会あんまりやってないですからね。

播磨 あっそうなんですかっ!!

藤代 インストラクターの皆さんとは食事しますけど、一般の方向けに食事しませんか?というのは最近やってないんですよ。

播磨 えーー、そうなんですか。そこでの出会いをきっかけに、藤代さんが同い年だったこともわかって、より親近感を覚えたんです。サッカー界で著名な池上正さんをチームにお招きしたこともあって、考え方が凄くリンクしていたんですよね。問いかけることで、子どもたちの力引き出す。とても理想だなって思ったのが、きっかけでしたね。

藤代 知ってから変化はありましたか?

播磨 池上さんの哲学的な部分と、それを具体化しているしつもんメンタルトレーニングのアプローチがリンクして、すごくしっくりきたというか「納得!」と思ったのをよく覚えています。

藤代 なるほどなぁ。どんなことでもいいんですけど、変化したことの中で覚えていることはありますか?

播磨 大きく変わったことは、自分自身が一番変わったと思います。

藤代 というと?

播磨 自分自身の考え方に自信が持てないところがあったんです。それを藤代さんと池上さんと出会って「こんなに多くの人が同じ思いでいてるんだ!」と感じ、もっと素直に子どもたちに伝えていこうと思えました。まず、自分自身が大きく変わった気がしたんです。その後にチームの雰囲気が大きく変わりましたね。

藤代 おー、どんなふうに?

播磨 まず、子どもたちが伸び伸びやります。(笑)

藤代 最高ですね(笑)

播磨 も~ね~「これこれ!」って思いました。

藤代 今までは違ったの?

播磨 今まで「子ども達が考える機会をつくることが大切だ」という認識は強くあったんです。でも、どう関わっていいかわからない。そのギャップに迷っていたんですよね。だから、選手にビシバシきつくやっていた時期がありました。それを見ていた子どもたちが6年生や5年生になり、親も指導を見ている。すると、不思議と「もっと厳しくやってほしい」と要求する親も多かったし、子どもも多かったように感じていました。「勝たなくてはいけない」というプレッシャーの中で、遠征に行って、お金や時間もたくさんかけてきた。でも、結果は出なかったんです。チームの中で抱えていたストレスの矢印が監督の僕に向くことも多くありました。なかなか方向転換することができなかったんです。けれど、池上さんと藤代さんと出会ったことがきっかけで、「子どもたちが考えるアプローチ」にシフトしていこうと思ったら、保護者の中でも賛同してくれる人が少しずつ増えていったんです。出会って僕が変わったことによって、以前のようなストレスは一切なくなったんですよ。

藤代 一切(笑)!?

播磨 一切なくなりましたね!

藤代 すごい!!

播磨 「自分の目指していたものってこれやな」って思えたんですよね。

目指す山を共有すると、肩の力が抜ける

 

藤代 自信をもって「これだっ!」とやり始めたら、子どもたちも変わって、共感してくれる保護者も増えたって感じ?

播磨 そうゆう感じですね!

藤代 なるほど。すると精神的にもとても楽になりますよね?

播磨 めちゃくちゃ楽ですね。より子どもたちに純粋にエネルギーを注げるようになりました。当時の心境をブログにも書いているんですけど、頭の中ではイメージしているけれど、実際に行動できないことも多かったんです。もうひとつのきっかけは、インストラクター養成講座をチームの保護者と一緒に受講したんです。それが、大きな大きな転換期でした。

藤代 おー、なんでなんで?

播磨 結論から言うと、大和ミニバスをその保護者に引き継いだんです。

藤代 あっ今回の?

播磨 そうなんです。僕がいなくなっても「いままでとおなじ考えや理念でやっていきたい」と言ってくれて、チームを任すことになりました。大和ミニバスの「ファン」も増えてきていたんですよ。一方で、僕がビシバシやっていた頃は「コーチが上で、アシスタントコーチが下。保護者の中に調整役がいる」という構図ができあがっていて、監督にはモノ申せないみたいな雰囲気がありました。「勝てないチームなんだから、もっと厳しくするべきだ」といったような考え方の人がコーチ陣や保護者の人に増えてきていて「子どもたちのために、より良くするにはどうしたらいいんだろう?」って葛藤しましたね。これは僕の中では大きなきっかけでしたね。

藤代 なるほどなぁ。「いつも私ばっかり」と損得勘定で行動してしまうことってあるけど、そうした雰囲気がなくなってきた感覚もある?

播磨 そうした雰囲気は全然ないと思います。大和ミニバスには「保護者会」があるんですが、子どもたちを支援、応援するという意味で「支援会」って呼んでるんです。我が子だけじゃなくて、みんなでチームのファンになってほしいという思いが強かったですね。

藤代 僕がトレーニングに伺ったときは、他のチームも招待していましたよね。

播磨 そうそう。地域の他チームにも声をかけさせてもらいました。あれもすっごい大きなことで、みんなメンタルトレーニングにすごく興味を持ってたんです。ただ奈良県という狭い世界なのに十分に広がらなかった。そこを自分なりに分析したら、やっぱり大和は結果も出ていないということに原因があるように感じましたね。結果が出ることで改めて注目してもらえることも多くあるんだと気づきました。

 

ひとりで歩くのをやめて、共感者と歩む。

藤代 実践していく中で、特に印象に残っていることはありますか?

播磨 一緒にインストラクターを受講した保護者の方が、しつもんメンタルトレーニングのフレーズを活用しながら問いかける姿を見て、一緒にやっていける仲間がいることがとても嬉しかったですね。

藤代 目指すところがおなじ同士ができて嬉しい?

播磨 そうです!インストラクターの仲間っていうんですかね。池上さんや藤代さんの考えに共感する人が多くいるんだ、ということは凄く実感していて、それは静岡県に転勤してからも強く感じているんです。ですので、ヘッドコーチのオファーをいただいた時も、まずは大和ミニバスのHPを見てもらえるようお願いしたんです。試合は全員出場します。子どもたちを叱責しません。子どもたちが考えて行動するようにサポートします。そのチームには「いままでやってきたことと全く違う方針になりますよ」って伝えたんですね。そうしたら、最初は凄く考えてはったんです。

藤代 チームの方も戸惑ったのかな?

播磨 そうですね。でも、多くの方が「いい考えですね」って言ってくれたんです。だから、少し見てみたいと(笑)

藤代 おー!いまは、お試し期間中なの?(笑)

播磨 そうなんですよ(笑)でも、今日も練習してきたんですけど、子どもたちがイキイキするんです。

藤代 そうなんだ。全然違うんだね。

播磨 全然違うんです。楽しいから時間もあっという間に過ぎて、子どもたちも「えっ!もう終わり?」という表情をする。
まだ保護者の中には「こうしなさい」って指示したくなる方もいるから「しっーーー」って言いながら進めています。「応援はいいですよ」って伝えながら。すると、だんだん大人も表情が変わって笑顔が増えるようになる。それが子どもにまた跳ね返って「もっとやりたい」と言うようになるんです。チームメイト同士、話をする機会もたくさんつくるので、頭もフル回転ですね。

 

子どもが「真剣に遊ぶ姿」を1秒でも長く見ていたい

藤代 なるほどなぁ。播磨さんは、どんな時に喜びを感じるんですか?

播磨 子どもたちが、楽しそうに・・・違うな。「子どもたちが真剣に遊んでいる姿を見たとき」ですかね。「こんなのしようか」って提案したり、「どんなことしたい?」って希望を聞いてみたり。その中で途中で「うまくいかなかったこと何があった?」「うまくいったこと何があった?」「じゃあ、どうしたら次はうまくいきそう?」って対話をします。また、年齢が異なる子どもたちをごちゃまぜにして試合をするんです。するとテクニックや体格差が大きくあるので「6年生はドリブル1回だけにしよう」とか勝手にみんなでアイデアを話しはじめるんですね。それでもまだチームバランスが崩れていると「次はランニングシュートだけ」とかルールを工夫するようになる。こうして「次はどうしよう、あーしよう」って話しているのが面白いんですよね。一生懸命考えて、ほんで「やろうか」ってやってみると失敗する(笑)するとまた勝手に話しだんすんです。そういうのを見ていると面白いなっ~て。

藤代 子どもたちが、真剣に試行錯誤したり、考えてやっている姿が微笑ましいというか、幸せに感じるんだ。

播磨 そうですね。学校でも一緒だと思いますね。

藤代 自分が言ったとおりにやるよりも、いいってことだよね。

播磨 そうですね。以前は、公立の学校だったので取り組みたいけれど、できないことも多くあったんです。でも、静岡にきて、いまは探求型の学びを進めている学校なので楽しくて仕方ないんですよ。子どもらが「考えすぎて頭が痛い」と言った日には「よ~し勝ったっ!!」みたいな(笑)

藤代 探究型の授業良いなー!

播磨 面白いですよ!

藤代 今後はどんなことをしていきたいですか?

播磨 チームの子どもたちにもそうなんですけど、オープンな講座を開いたりとか、保護者の方向けに講座ができたらいいなと思っています。もちろんいまのチームを中心とした活動にはなると思うんですけど、地域に広めていけたら嬉しいなって。自分ひとりがやるのではなくて、喜びを共有したいというか。

藤代 分かち合っていきたい?

播磨 そうです。そうです。だから仲間を増やしていきたいなって。

藤代 それはいいですね。静岡のどのエリアでしたっけ?

播磨 静岡の市内ですね

藤代 静岡市内かっ。西?東?東かっ?

播磨 東のあたりだと思います(笑)

藤代 お互いわかってない(笑)

播磨 富士山のほうが、まだ東にあったと思います。

藤代 なるほど。じゃ~もう少し西だね(笑)新しいチームで関わる皆さんと一緒に、子どもが真剣に試行錯誤する姿を見る喜びを分かち合うために、実践していくんですね。あとあれか!私立の先生になったから前よりは自由に。

播磨 めちゃくちゃ自由ですね(笑)だから実を言うと、起業しようかなと思っていまして。

藤代 そっちも自由なんだ。

播磨 そっちも自由なんです。

藤代 え~すごい。

播磨 なので、今考えているのは、講座を定期的に開いたり、チームのコンサルティングもできたらと考えています。個人に限らず、チームのメンタルコーチにも興味があります。

藤代 なるほど。いいですね。より自由に。いまの方がいい顔している気がします(笑)いまのほうがより楽しそう。

播磨 楽しいですよ!縛られてないから(笑)

藤代 その分、責任もあるけど楽しいってことですね。

播磨 そうですね!

藤代 いいですね。ありがとうございました。

播磨 ありがとうございました。

 

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高校時代に1年米国に留学。その後、AO入試にて英語系の大学に進学するも、塾での出来事をキッカケに、京都教育大学へ編入。公立小学校に10年勤め、1年目に大和ミニバスケットボールクラブを立ち上げる。池上正氏と藤代圭一氏との出会いから、勝利至上主義から「自立した選手・チーム」に舵を切る。その後、8ヶ月の育児休暇を取得。休暇中に出会った方々との縁で、静岡県の私立に転職。現在は、IB(国際バカロレア)教育の実践と育児を楽しみながら、新たなチームにて指導に携わる。