「仲間との対話で “やりたいこと” が実現されていく」宮野裕喜さんインタビュー

 

 

宮野裕喜さん(くまの運動教室 主宰)
2014年よりスポーツクラブから独立し、大人の運動教室を開校。その後、バレーボール少年団との出会いをきっかけに「より子どもたちの力になりたい」と感じ、子どもの運動指導に移行する。そんな中、しつもんメンタルトレーニングと出会い、静岡県をメインに全国各地でワークショップを開催。また、インストラクターを養成するなど活動を広げている。2019年4月より、日刊スポーツさんにて毎週金曜日にメンタルトレーニングの記事を連載している。▶ブログはこちら

 

イライラしていた選手に変化が起こったきっかけ

藤代 くまさん(宮野さんのニックネーム)は、しつもんメンタルトレーニングを知ったきっかけは何だったの?

宮野 子どもへの関わり方、コーチングの手法を探していたんですよ。

藤代 うんうん。

宮野 それに加えて、メンタルトレーニングのアドバイスができないかなぁと感じていて。そのときに、藤代さんが浜松に来られて講演会をすることをたまたま知ったんです。

藤代 おーなるほど。

宮野 講演会があるっていうのを知って、いろいろ調べたんですよね。

藤代 当時、メンタルトレーニングやコーチングの手法を探していたのは、何かきっかけがあったの?

宮野 ジュニアチームの指導に携わることがあって、言葉がけ(PEP TALK)の勉強はしていたんですが、その他にも、もうちょっとできることはないかな?と思っていたんです。当時、まだ自分にはその辺が足りないと感じていて、これから子どもたちを指導していくと、壁にぶち当たるだろうなぁと思っていたので、いろいろ探していましたね。

藤代 トレーニングの部分はもともと専門家だけれども、それにプラスしてもうちょっと心理面で力になりたいという思いが背景にあったんだね。

宮野 はい。そうですね。

藤代 実際に受講して、実践してみて変化はありました?

宮野 最近の話でいくと、2019年の5月から関わらせていただいているチームがあるんです。そこでは、週に一回、5分〜10分しか話をしていないのですが、見違える変化があったんですよ。そのバレーボールチームは、前回は県大会ベスト4。上位2チームに挑むには、もう少し力が足りないかな?と感じていました。チームの核になる選手が、イライラしたフラストレーションを他の選手にぶつけていたり、エースの選手が気持ちよく打ちたいのに、打てない状況がすごく多かったんです。そこで、しつもんメンタルトレーニングを導入してみました。すると、。この前の大会では選手たちが見違える様に喜んでいる姿を見ることができました。残念ながら勝利には繋がらなかったのですが、いつもなら負けてしまうパターンの所で競っていたり、思った以上に早く反応が出ましたね。

藤代 彼らにとって何が良かったんだろうね?

宮野 先生にヒアリングした際に「選手達が試合中にプレッシャーを感じて、いつものパフォーマンスを発揮できていないことがある」という課題が浮き上がってきました。ですので、選手達に「試合中に変えられるものは何がある?」「試合中に変えられないものは何がある?」と質問をして、考える機会をつくったんです。

すると、「試合中に自分や仲間がミスしたことという事実は変えられないんだ」という切り替える姿勢が出てきて、さらに「ここから良くするためには、どうしたらいいんだろう?」と考えるように変化してきました。

とても印象に残っていることに、最もイライラを表す選手が、「俺がここで決めて、喜んだら絶対チームの流れは変わるだろう」と思ってわざと行動に起こしました。すると、まわりの選手もその姿に驚いて、俄然チームに勢いが出た。保護者の人も彼がジャンプしてガッツポーズするなんて見たことなかったそうなんです。彼自身も「自分が変わるってこういうことなんだな」と感じたらしくて。

藤代 おー。普段はそういう子じゃないんだ?

宮野 練習の時から「お前しっかりやれよ」と罵ることも多かったんです。練習でも試合でも、イライラしていることが多くて、ポジティブな感情を表現することは少ないと聞いていました。

藤代 技術力があるあまりに、そのレベルに追いついていない選手たちにイライラして当たっていたのかもね。でも、それじゃダメだってことに彼自身が気づいたんだね?

宮野 そうですね。

藤代 へー!それすごいね。

宮野 びっくりしました僕も。

藤代 くまさんは何をしたの?特別なことをしたの?

宮野 毎週金曜日の練習に行って選手達と話をするくらいなんです。本当に最後に10分くらい時間をもらって、「今週はどんな感じ?」と子どもたちに質問するだけ。

藤代 もうちょっと詳しく聞きたいんだけど、「今週はどんな感じ?」と聞いて、その後は?

宮野 そこで出てきたキーワードをもとにテーマを決めて、ワークブックを使って選手と対話をすることを繰り返しています。

藤代 繰り返すだけ。そうすると選手が変わり始めると。

宮野 そうですね。

藤代 面白いなー。監督さんはどんな事を仰ってましたか?試合を見て。

宮野 監督さんは「自分はずーっと種まきをしていて、育てているつもりだったけど、子どもたちにはピンと来ていなかった。宮野さんの伝え方によって、子どもたちが理解してくれるようになった」と仰っていました。監督さんに言わせると僕が肥料みたいな感じになって、成長の促進を促してくれた、と。

 

感情に支配されるのではなく、自分で感情を選択する

藤代 なるほどね。すごいなー。他には何か印象に残っている成果はありますか?

宮野 パラリンピックの水泳の選手が毎月来てくれるんですけど、一番最初に来たときに「飛び込みができなくなりました」と言うんです。そこで、一時間くらい雑談に近いコミュニケーションを通じて、「いままではどんなことに取り組んだの?」など、選手の考えや実践に耳を傾けました。その後に、自分なりに「改善するために、こんな選択肢もあるけどどう思う?」といくつかの選択肢を伝えてみたんです。そうしたコミュニケーションを定期的に行うことで、飛び込みもできるように変化したんですよ。

藤代 おー。

宮野 まわりの選手が試合前に身体を叩いてスイッチを切り替えることがあったそうなのですが、それを見ると彼女は怖いと感じていたそうなんです。

藤代 選手自身がね。

宮野 そうです。ですので、その方法ではなく、違う手法について提案をしたら、「スムーズに試合に入れる様になりました!」と言ってくれたんですよね。

藤代 おー、すごい。くまさん自身は変化はありましたか?

宮野 僕自身は、感情に支配されることが少なくなりましたね。怒ってるなと気づきながら怒ることはありますが(笑)

藤代 どーゆうこと?(笑) 怒りを選択して怒ってるてこと?

宮野 怒りを選択してわざと怒ってます(笑)

藤代 昔はどうだったの?

宮野 昔は嫌なことがあったら瞬間的にすぐ怒っていたんですよ。

藤代 昔は感情に支配されていたけど、いまは自分でそれを支配している感じ?

宮野 あ、俺いま怒ってるな、と気づきながら怒っていますね。これは聞かないといけないし、言わないといけないな、と怒ることを選択している感じです。

藤代 くまさん自身が感情に支配されるんじゃなくて、自分で選択してやっているってことだよね。

 

日刊スポーツさんで記事を連載

 

藤代 最近は、日刊スポーツさんに10回の連載をしているけれど、どうやって依頼が来たんですか?すごいですよね。

宮野 日刊スポーツさんは、静岡支局長さんが「静岡県」「メンタルトレーニング」で検索したところ僕がヒットしたらしいんです。

藤代 おーすごい。それはコツコツ発信されていたんですか?

宮野 それはそうですね。自分が凹んでいる時はなかなか書けないこともありますが、ブログやSNSを通じて発信することは大切にしています。コツコツ活動し続けたから来たお仕事なのかな。なにもしないと全然こないですもんね。

藤代 見てくれている人がいるんだね。目の前のことを一生懸命やるのと同時に多くの人に知ってもらいたい気持ちはがぼくはあるのだけれど、くまさんはそのあたりどう感じていますか?

宮野 ビジネスセミナーを受講した時に「新聞に載りたいです」って発言したことがあるんです。そうしたら講師の方から「新聞なんて簡単に乗れるじゃん」って返ってきたんですよね。でも、それはぼくの求めている方法ではなかったんです。

藤代 新聞に載るにはたぶん3つのアプローチがあって、1つは「載せてくれませんか?とお願いする」2つ目は「お金を払う」3つ目は「先方から載せませんか?」と連絡をいただく。くまさんが望んでいたのは3つだったってことかな?

宮野 そうですね。

藤代 新聞に連載を持つってすごいことですよね。

 

仲間との対話で自分の「やりたいこと」が実現されていく

藤代 今後はどうしていきたいですか?

宮野 いま、転換期が来ていると感じているんです。今後は、よりバレーボールをメインにしていきたい。浜松にはVリーグに所属するチームがあって、そちらの女子中学生のチームに関わらせていただいているのですが、いま体制が変わりつつあるんです。ですので、組織にもうすこし踏み込んでジュニアの育成をやっていくべきなのか、どうしていこうかなと思ってるんです。

藤代 くまさんはどうしたいの?

宮野 いま運営している施設も大事にしたいけれど、女子とは別に、男子チームを立ち上げてやっていきたいとも感じてるんです。難しいかもしれないけれど、GMさんとも話をしながら、うまくビジョンを共有していければいいなと思っている。

藤代 いいですね。

宮野 でも、この思いは、北海道のインストラクター仲間に「10年後、どうなっていたら最高ですか?」と質問されて、そのときに出てきたものなんです。

藤代 おーそうなんだ!みんなで勉強会をした時に生まれた「やりたいこと」が動き出して、いま実現している。すごい。それ、1番いいなー!

宮野 当時、ゆくゆくはVリーグのトップチームにも関われたらと頭の中で描いていたら、現実になって、いまVリーグのお手伝いもしているようになっていることに驚いています。しつもんメンタルトレーニングは、選手や子ども達に実践するのも楽しいけれど、インストラクターの仲間であるみんなと話をすることで自分自身がやりたいことがだんだん実現している。だから惚れ込んでいるかもしれません(笑)

藤代 いいですね(笑)ほかに何か言い残したことはありますか?

宮野 本当にありがとうございますって言いたいです(笑)

藤代 それは嬉しいです(笑)ありがとうございました。

 

 

 

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

★静岡県浜松市でstudioZERO(大人向け)くまの運動教室(子ども向け)運動教室を経営。 くまの運動教室では「しつもん」をしながら子どもたちやる気を引き出し運動を好きになってもうことからはじめています。 ★しつもんメンタルトレーニングトレーナーとして、全国でインストラクター養成講座やワークショップを開催中 ★2019年4月から1年間、毎週金曜日に日刊スポーツにてメンタルトレーニングついて連載。