【対談後編】「誰かが一歩踏み出さないと、何も変わらない」

11月7日(土)に開催する男子アイスホッケー日本代表監督・岩本裕司さんとのオンライン対談。前半に引き続き、打ち合わせの後半部分をご紹介します。

【対談前編】いかに選手自身が考える場を作れるか?

2020.11.02
 
 
 

◎岩本 裕司さん(アイスホッケー男子日本代表監督)日本のトップリーグチーム雪印乳業アイスホッケー部に入部。1981~2001年まで20年選手生活を送り、歴代試合出場記録(当時)を塗り替え、日本一となり表彰を受ける。氷上の鉄人、ミスター雪印と呼ばれた。その後、指導者へと転身し、現在は日本代表監督を務める。
U18日本代表アシスタントコーチ→U20日本代表アシスタントコーチ/ヘッドコーチ→アメリカのジュニアチームアシスタントコーチ→日光アイスバックス(国内トップリーグ)ヘッドコーチ→男子日本代表ヘッドコーチ(現在)

 

 

競技の枠を超えた”仲間”とのつながりを

「誰かが一歩踏み出さないと、何も変わらない」

藤代:岩本さんとしては、今後、アイスホッケーの方々に伝えたいのか、それとももっと広く、スポーツ界全体に関わっていきたいのか。そのあたりはどうですか?

岩本:アイスホッケーにずっと関わってきて、それしか自信がないというのも正直あります。でもせっかく、代表監督としてコーチ論なども学んできたので、いろいろなスポーツの方と関われたらと思います。また、それが僕自身の学びにもつながりますしね。

藤代:違う競技の代表監督同士の話って、僕らとしては聞いてみたいと思いますよね。

鈴木:すごい・・・すごそう・・・。

藤代:だよね(笑)一般の感覚から言うと、「代表チームだから、情報をあまり出しちゃいけないのかな」っていう気持ちがあるんですよ。

岩本:確かに、そこはね。どこまでやっていいのか、僕も悩みます。僕としては、呼ばれればどこにでも行きたいし、なんでもやってみたい気持ちが今は強いんですけどね。誰かが一歩踏み出してやっていかないと、変わらないのかなと思う。「思い」を持ってしている行動であれば、何か言われても、その「思い」を伝えていくことも必要だと思ってます。

藤代:アイスホッケーに限らず、トップでやっている方であれば、競技の枠を超えても「やっぱりここは重要だよ、大切だよ」という共通の部分があると思うんです。いち指導者である僕たちとしては、その辺りをやはりお聞きしたくて。アイスホッケーで言えばシステムや戦術的なことはもちろん知りたい。でも、共通性があることなら、お互い刺激になると思うし、お互いの競技を見てみようと思うきっかけにもなりそうな気がするんですよね。

岩本:そうですね。こういったトーク形式だと助かる気がしますね。それこそ質問していただければ。深みのあるところまで持っていくのがまだまだで(苦笑)。そこは勉強中です。

藤代:なるほどなるほど。他の競技の方とのお話、聞いてみたいですね。

鈴木:ちなみに今、お話してみたい方っていらっしゃるんですか?

岩本:JOCのアカデミーでご一緒したラグビーの方はとても刺激になりましたね。個人競技だと選手の結果がそのまま指導の評価にも結びつく。でも、どうしても団体競技はそう簡単にいかない。代表チームの作り方も違いますしね。女子の7人制のスタッフさんなんですが、その方といろいろお話させていただいて、とても勉強になったんです。

 

「ジュニア世代では、たくさんの選択肢があることを伝えて」

 

藤代:岩本さんは男子代表監督で、チーム作りとなると、短い期間でチームを作らなきゃいけない。集まったときにどういったことをするか、世界と戦うためにどうチームをまとめていくか、そういう部分に興味がある人もいると思うんです。

一般の方からすると、例えば、サッカーの代表イメージが強いのかな。代表チームにシェフが帯同したり、トレーナーも複数いたり、そういった環境が今は整っているけれど、他の競技は全く違う。男女によっても、オリンピックで結果を出しているかどうかによっても全然違うと思うんです。厳しい環境の中でチームを作っていくのは大変なこと。アイスホッケーでのチーム作りについて、指導者の皆さんは聞きたいと思うんです。

岩本:男子アイスホッケーの場合、これまで外国人監督が多かったので、こういったオープンに話す機会がなかったのかもしれません。女子はオリンピックに出てますが、男子はメディアに取り上げてもらうのも今は大変ですし。

藤代:僕も海外遠征に帯同させていただいたことがありますが、カナダやアメリカにいくと、アイスホッケーがテレビで普通に流れているじゃないですか。国技だと言われればそれまでなんですが、やはり文化の違いが大きいんだなと。

なかなか日本では、スポーツに関わっている身の僕ですら見たことがなかった。もっとたくさんの人に見ていただきたいと思うんですよね。僕も何かしら力になれたらなと思っていて、新しく出した本にも、オンラインでの講座や分野が違う方との対談の時も、アイスホッケーでの事例を出したりいるんですよね(笑)

あとはやはり、世界で戦える選手とそうでない選手の違いがもしあるとしたら、どういったところなのか。ジュニアからどう育てていけばよいのかといった点も、これという正解はないとしても、興味があると思います。

鈴木:「U16やU14のキャンプでは、システムをイチから伝える」というお話がありましたが、そうなんですか?

岩本:うん、そうだね。もちろん、「だいたい知ってる」「用語は知ってる」という選手が集まります。でも、どうしてそれが必要なのか、どうしたらもっと効率的かというような、細かなところ、深いところまではわかっていない。そこをしっかり落としこんでプレーに反映させないと、チームとしては崩れやすくなる。

代表レベルになると、システム的な、組織的なプレーが必要になりますが、ジュニア世代ではたくさんの選択肢があることを伝えてほしい。小さいうちから型にはめて「これをやれ」となると、そのプレーしかできなくなる。そうすると、指示待ち族になってしまって、ベンチにいるコーチから何か言われるのを待ってるというような選手になっちゃう。そういう選手が多いように感じますね。

 

アイスホッケーを知るきっかけに

藤代:このままでは世界で勝てない、世界に通用しないんじゃないかということは、きっと指導者の皆さんも感じている部分があるはず。でも、世界で戦う場に行った人しか肌で感じることはできない。直接体験することはできないけれど、岩本さんやその場に立った人たちから話を聞くことで、「追体験」はできると思うんです。「このままじゃダメだと思った瞬間」や、世界との差を痛感した時のエピソードっていうのは、なかなか聞けないのでぜひお聞きしたいです。

岩本:僕としてもどのような機会が持てるのか、いろいろ考えています。また、指導法だけでなく、仲間作りのためにも動いていけたらなとも思っていて。最近知り合った学生さんの話ですが、将来はプロチームを立ち上げたいと言っている。そういった夢を持った人たちが集まってくると面白いのかなと思います。

藤代:おー、いいですね。では一度、企画を考えてみます。最初の切り口としては、代表のチーム作りについてや、競技特性のお話、実はこうしているんだといった内容があれば、言える範囲でいいのでお話していただければ。アマチュアスポーツならではの部分もあるでしょうし、そのあたりを皆さんに知っていただいて、競技の枠を超えてさらに何か広がりができればと思います。楽しみです!

岩本:男子はアジアリーグが始まっています。他競技の方にはこの機会をきっかけに興味を持っていただけたら嬉しいですし、アイスホッケー関係者の方からは、ご質問、ご意見をたくさんいただけたらと思います。僕も楽しみです。よろしくお願いします。

 

 

いかがでしたでしょうか?

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